TRPV4異常症

遺伝性疾患プラス編集部

英名 TRPV4-associated disorders
別名 変容性骨異形成症(Metatropic dysplasia)、脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型、脊椎骨端骨幹端異形成症Kozlowski型、短体幹症、短指を伴う家族性指関節症、Autosomal Dominant TRPV4 Disorders
日本の患者数 不明(過去26年間に計37例の疾患登録記録あり)
発症頻度 不明
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝]
発症年齢 胎児期より
性別 男女とも
主な症状 扁平椎、関節の腫大と拘縮、低身長など
原因遺伝子 TRPV4
治療 整形外科的な対症療法
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どのような病気?

TRPV4異常症は、TRPV4遺伝子変異によって引き起こされる、骨・軟骨などに症状が見られるいくつかの疾患の集まり(症候群)です。

この病気に含まれる主な疾患として、変容性骨異形成症(へんようせいこついけいせいしょう)、脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型(せきついこつたんこつかんたんいけいせいしょうまろとーがた)と脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型(せきついこつかんたんいけいせいしょうこずろうすきーがた)、短体幹症、短指を伴う家族性指関節症などがあります。これらのどの疾患も、その程度や重症度はさまざまではあるものの、背骨(脊柱)や手足(四肢)の関節に変形が起こりやすいという特徴があり、背骨を形成する椎骨の高さが低くなる(扁平椎)、関節の腫大と拘縮(こうしゅく)、低身長などが共通の症状として含まれます。

変容性骨異形成症(Metatropic dysplasia)はこれらの中で最も重症度が高い疾患です。生まれた時から腕と足が異常に短く低身長となります。胸(胸郭)が狭いことで、呼吸障害を起こし命に関わる場合もあります。幼児期頃から脊柱の湾曲(脊柱側弯症または脊柱後弯症、一緒に発生した場合は、脊柱後側弯症)が起こり、成長とともに悪化する(進行性)だけでなく治療しても症状はあまり改善しません(治療抵抗性)。脊柱の湾曲が重度に進行することにより、腕と脚の長さに比べて胴体が非常に短い体幹短縮型の低身長となります。また、腕と脚の大関節が肥大して動ける範囲が狭くなったり(可動域制限)、首の動きに重要な環軸椎の変形によって脊髄が圧迫され、痛みや運動障害を起こしたりする(脊髄症)場合もあります。その他、尾骨部に尻尾のような皮膚のヒダが見られること、X線検査を行った際、長管骨と呼ばれる細長い骨がダンベル型になる、鉾槍状の腸骨(ちょうこつ:骨盤を構成する扇状に広がる骨)が特徴となります。変容性骨異形成症の最重症例では、胎生致死(発生時期の分化異常によりおなかの中で死亡)となる場合もあります。

脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型は、脊柱の変形は比較的軽度なことが多いとされますが、低身長、手や足の指の短縮、扁平椎などの症状が見られます。

脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型は、体幹短縮型低身長、樽状の胸郭、脊柱変形、関節拘縮、下肢変形などの症状が見られ、X線写真では、扁平椎がはっきりしており、椎体が前後左右に大きい(open staircase appearance)ことが特徴です。

短体幹症も同じように体幹短縮型低身長が見られ、扁平椎も程度が強いですが、手足の短縮は軽度です。

短指を伴う家族性指関節症では、手指の変形性関節症が進行することが特徴ですが、脊柱や四肢にははっきりとした症状が見られません。

この病気の国内における正確な患者数や発症頻度は不明ですが、日本整形外科学会骨系統疾患全国登録において、1990-2015年の26年間に、変容性骨異形成症で30人、脊椎骨端骨幹端異形成症Maroteaux型で2人、脊椎骨幹端異形成症Kozlowski型で2人、短体幹症で3人の合計37人の登録が確認されています。

また、この病気の原因となるTRPV4遺伝子の変異は、骨格や関節などの症状の他に、神経や筋肉において、末梢神経障害や筋力低下などの症状を引き起こす疾患(シャルコー・マリー・トゥース病など)の原因となることも知られています。米国のワシントン大学を中心としたスタッフが運営している遺伝性疾患情報サイト「GeneReviews」では、Autosomal Dominant TRPV4 Disorders(常染色体優性TRPV4疾患)として、神経筋障害と骨格異形成の両方を含めた一つの症候群として定義されています。GeneReviewsによれば、この病気では通常は神経筋か骨格のどちらかにしか症状が見られないことが多いものの、まれに両方の症状が重複して認められる場合もあると伝えています。

日本において今のところTRPV4異常症は、骨格異形成を主な症状とする疾患として小児慢性特定疾病の対象疾患となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

TRPV4異常症は、12番染色体の12q24.11領域にあるTRPV4(transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 4)遺伝子の変異や欠失によって引き起こされます。TRPV4遺伝子は、カルシウムチャネルと呼ばれるタンパク質の一つであるTRPV4の設計図となります。カルシウムチャネルは、細胞の膜に存在し、細胞の外側から内側にカルシウムイオンが入ってくる際の通路や入り口の役割を持っています。

TRPV4は、体の水分バランスの維持(浸透圧)、熱、痛みなどの刺激などにも関連しており、体の多くの組織で広く機能しています。その機能の中には、初期発生時において骨や軟骨の大部分を丈夫で柔軟な組織にするために重要な役割も含まれます。このTRPV4遺伝子の変異により異常なTRPV4タンパク質が作られた結果、細胞内に異常なカルシウムイオンの流入が起こり、TRPV4が持つ機能が失われることがさまざまな病気の症状を引き起こすと考えられています。

しかし、TRPV4遺伝子の変異が具体的にTRPV4異常症の症状とどのように関連しているのか、その発症メカニズムについては、まだほとんどわかっていません。

この病気は、両親に病歴がないものの、新たな変異が原因となって病気を発症する「孤発例」である場合と、親からの遺伝である場合の両方の可能性があります。親から遺伝する場合には常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝します。この遺伝形式では、どちらかの親が病気の場合、子どもに病気が引き継がれる確率は50%となります。

Autosomal Dominant Inheritance

どのように診断されるの?

この病気の診断、特に低年齢の変容性骨異形成症の診断では、四肢短縮型低身長が症状となる他の疾患との見分けが重要となります。

この病気の診断基準は、以下のように定められています。

1)下記a)からg)のうち、4つ以上の症状を認める

  a)3SD以下の体幹短縮型低身長

  b)脊柱変形

  c)四肢大関節の腫大

  d)四肢大関節の拘縮

  e)手指関節の腫大

  f)手指関節の拘縮

  g)尾骨部の皮膚ヒダ

2)X線検査の結果、下記a)からf)のうち、4つ以上の症状を認める

  a)ダンベル状の長管骨

  b)鉾槍状の腸骨

  c)脊柱後側弯(Cobb角20度以上)

  d)扁平椎および終板不整

  e)椎体のopen staircase appearance

  f)手指関節の変形性関節症変化

3)軟骨無形成症、脊椎骨端異形成症、偽性軟骨無形成症、Kniest骨異形成症、進行性偽性リウマチ様骨異形成症の5つの疾患ではない(鑑別診断)

上記、1)、2)、3)を満たした場合、この病気と確定診断されます。

また、3)の他、上記1)、2)をそれぞれ3つ以上満たしており、遺伝学的検査によってTRPV4遺伝子に変異を認めた場合にも確定診断となります。

どのような治療が行われるの?

TRPV4異常症に対する根治的な治療法はなく、それぞれの症状に対する整形外科的な対症療法が中心となります。脊柱や四肢関節の変形によって、早発性の変形性関節症(軟骨などがすり減って関節の摩擦で炎症が起きる)や変形性脊椎症を発症しやすいため、それらに対する治療が多く行われます。

特に変容性骨異形成症においては、脊柱変形や環軸椎の不安定性によって脊髄症が発症した場合には、変形矯正術や除圧固定術などが行われます。顕著な胸郭や脊柱の変形によって呼吸機能障害が引き起こされるような重症例の場合には、酸素投与などの呼吸管理が行われることもあります。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でTRPV4異常症の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

難病の患者さん・ご家族、支えるさまざまな立場の方々とのネットワークづくりを行っている団体は、以下です。

 

参考サイト

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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