2型コラーゲン異常症

遺伝性疾患プラス編集部

2型コラーゲン異常症の臨床試験情報
英名 Type II collagenopathy
別名 2型コラーゲン異常症関連疾患、II型コラーゲン異常症、軟骨無発生症2型(Langer-Saldino型)(軟骨無発生症II型、Achondrogenesis)、扁平椎異形成症,Torrance型(Platyspondylic lethal skeletal dysplasia, Torrance type)、軟骨低発生症(Hypochondrogenesis)、先天性脊椎骨端異形成症(SEDC、Spondyloepiphyseal dysplasia congenita)など
日本の患者数 約1,500人と推定
海外臨床試験 海外で実施中の治験情報(詳細は、ぺージ下部 関連記事「臨床試験情報」)
発症頻度 不明
子どもに遺伝するか 遺伝する[常染色体優性(顕性)遺伝]
発症年齢 胎児期より
性別 男女とも
主な症状 胎児期の死亡、特徴的な顔立ち、低身長、変形性関節(脊椎)症、近視、難聴など
原因遺伝子 COL2A1
治療 対症療法
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どのような病気?

2型コラーゲン異常症は、2型コラーゲンの設計図となるCOL2A1遺伝子の変異によって、主に骨や軟骨に症状が見られる遺伝性疾患です。

この病気は、同じ遺伝子の変異を持ち、X線検査で骨の形状などに共通した特徴が認められる疾患の集まり(症候群)であり、多様な特徴や症状を示します。重症度も幅広く、胎期や出生直後に命を落とすほど極めて重い症状から、小児期以降になってから診断されるような比較的軽い症状までさまざまです。

この病気で共通してみられる症状や特徴として、足や腕(四肢)と胴体部分(体幹)の両方が短くなることによる低身長、関節や背骨(椎間板)の軟骨の異常による若い時期からの変形性関節症・変形性脊椎症、椎体(ついたい:背骨を形成する椎骨の円柱状の部分)や長管骨(ちょうかんこつ:腕や脚にある長い骨)の形成異常・変形、顔面の中央部分が平坦で顎が小さいといった特徴的な顔立ちなどが認められます。内反足、進行性の近視や難聴、口蓋裂などを合併することもあります。

この病気には、これまで個別に扱われてきた以下の10疾患が含まれます。

1)軟骨無発生症2型(Langer-Saldino型)、2)扁平椎異形成症,Torrance型、3)軟骨低発生症、4)先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)、5)著しい骨幹端変化を伴う脊椎骨端異形成症(SEMD)、6)Kniest骨異形成症、7)脊椎末梢異形成症、8)中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(以前のCzech異形成症)、9)Stickler症候群1型、10)大腿骨近位骨端異形成症

含まれる10疾患の重症度と特徴

重症度(診断される時期) 疾患名 特徴

最も重症(胎児期)

1)軟骨無発生症2型(Langer-Saldino型)

2)扁平椎異形成症,Torrance型

3)軟骨低発生症

・多くの場合胎児期や出生直後、生後早期に死亡する

・背骨や骨盤において椎体や恥骨などが正常に作られない

・肺や心臓などを取り囲む骨(胸郭)が十分に形成されない

・身長は非常に小さい

重度から中等度(胎児期または新生児期)

4)先天性脊椎骨端異形成症(SEDC)

5)著しい骨幹端変化を伴う脊椎骨端異形成症(SEMD)

6)Kniest骨異形成症

・出生時に診断されるが出生直後の死亡には至らないことが多い

・椎体や恥骨の異常のほか、脚の骨などで骨化遅延

・深刻な合併症として、頸椎の不安定性、脊髄圧迫が起こることもある

・6)Kniest骨異形成症は近視や網膜剥離など眼の症状が現れる頻度が高い

・身長は小さい

・4)には青年期以降に診断される早発性関節症を伴う軽症脊椎骨端異形成症を含む

中等度からやや軽度(新生児期~思春期)

7)脊椎末梢異形成症

8)中足骨短縮を伴う脊椎骨端異形成症(以前のCzech異形成症)

9)Stickler症候群1型(Stickler様症候群)

10)大腿骨近位骨端異形成症

・身長は小さい~平均

・骨の症状は比較的軽度

・早発性の変形性関節症

・7)、8)は難聴、網膜剥離を来す場合がある

・10)は股関節痛、足を引きずって歩くなど。通常は視覚、聴覚、口腔顔面などの症状は見られない

(参照元:GeneReviews、MedlinePlus、2019 年版骨系統疾患国際分類の和訳、ほか)

 

2型コラーゲン異常症の正確な発症頻度はわかっていません。小児慢性特定疾病情報センターによれば、この病気の日本の患者数は約1,500人であると推計されています。

この病気は、9型もしくは11型コラーゲンの遺伝子を原因遺伝子とする症例を含めた「2型コラーゲン異常症関連疾患」として、小児慢性特定疾病の対象疾患となっています。

何の遺伝子が原因となるの?

2型コラーゲン異常症は、12番染色体の12q13.11と呼ばれる領域に存在するCOL2A1遺伝子の変異によって引き起こされます。このCOL2A1遺伝子は、2型コラーゲンというタンパク質を作るための設計図です。

2型コラーゲンは、軟骨に必須の成分で、眼球の中を埋める硝子体や耳の内部(内耳)を形成する重要な成分でもあります。COL2A1遺伝子の変異によって、軟骨自体の異常に加えて、軟骨の中で新たに骨が形成される過程(軟骨内骨化)が妨げられ、さまざまな骨格の形成に影響を及ぼすほか、目や耳の症状を合併すると考えられています。しかし、その詳細なメカニズムはまだわかっていません。これまで報告されているこの病気におけるCOL2A1遺伝子の変異は、遺伝子全体のさまざまな場所にみられますが、2型コラーゲン異常症の多様な症状や重症度とそれぞれの変異との関連についてもわかっていません。

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2型コラーゲン異常症は、家族には病歴がないものの、新しい変異が原因でこの病気を発症する孤発例、もしくは常染色体優性(顕性)遺伝形式の遺伝により発症します。親がこの病気の場合、病気が子どもに引き継がれる確率は50%です。

Autosomal Dominant Inheritance

どのように診断されるの?

2型コラーゲン異常症は、X線検査で確認される骨化遅延(骨が形成される進行が通常より遅れている)を特徴とします。そのほか、顔面中央部の低形成やさまざまな骨格外症状(難聴、視力障害、口蓋裂など)が診断の参考となります。

この病気の診断基準として、1)低身長、2)関節変形または拘縮、の2つのうち1つ以上、さらにX線検査で、3)脊椎・骨端・骨幹端の異形成、4)椎体または恥骨の骨化遅延、の2つのうち1つ以上を認め、加えて遺伝学的検査で2型コラーゲン遺伝子に変異を認めた場合にこの病気の診断が確定となります。

どのような治療が行われるの?

2型コラーゲン異常症では、まだ根本的な治療法は確立されていないため、それぞれの症状に対する対症療法が主な治療となります。重症例での呼吸管理、網膜剥離の治療、難聴に対する早期の治療や対応、小顎症による歯列不正に対しての矯正治療のほか、関節変形、早発性の変形性関節症、脊柱変形、環軸椎亜脱臼(第一頸椎と第二頸椎がずれて不安定になる状態)に対する整形外科的手術が行われることもあります。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本で2型コラーゲン異常症の診療を行っていることを公開している、主な施設は以下です。

 

※このほか、診療している医療機関がございましたら、お問合せフォームからご連絡頂けますと幸いです。

患者会について

2型コラーゲン異常症の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

 

参考サイト

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