当事者・ご家族の心のよりどころをつくるために、2型コラーゲン異常症患者・家族の会

遺伝性疾患プラス編集部

骨や軟骨を中心に、多様な特徴や症状が現れる骨系統疾患の1つ、「2型コラーゲン異常症」。2型コラーゲン遺伝子(COL2A1遺伝子)の変異で発症し、X線検査で骨の形状などに共通した特徴が認められる疾患の総称(症候群)です。主に10疾患に分類され、症状の種類や重症度もさまざまです。

今回ご紹介するのは、2型コラーゲン異常症患者・家族の会です。代表の毛利環さんもまた、当事者ご家族の一人で、お子さんは2型コラーゲン異常症の「扁平椎異形成症Torrance(トレンス)型」をお持ちです。2型コラーゲン異常症患者・家族の会は最初、軟骨無形成症の患者会の部会として活動を開始し、2023年3月に独立しました。今回は、その活動内容と毛利さんのご経験について、お話を伺いました。

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2型コラーゲン異常症患者・家族の会 代表 毛利環さん
団体名 2型コラーゲン異常症患者・家族の会
対象疾患 2型コラーゲン異常症とその関連疾患
対象地域 全国
会員数 95人
設立年 2016年(独立2023年)
連絡先 公式ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」または「メール」two_type_collagen@yahoo.co.jpまで
サイトURL https://2typec.org/
SNS Twitter
主な活動内容 講演会や交流会を開催するなど、2型コラーゲン異常症の当事者・ご家族を支援する活動を行う。その他、当事者の実態調査、パンフレットや絵本の作成、学会やフォーラムへの参加などを通じて疾患啓発活動も実施中。
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2型コラーゲン異常症患者・家族の会

妊娠中にお子さんの病気の可能性を知り、出産後に診断

お子さんが診断を受けられた経緯について、教えてください。

妊娠中に、娘の足の短さを指摘され、レントゲンの結果から「骨の病気の疑いがある」と説明を受けました。娘が生まれた後、2型コラーゲン異常症の中でも「扁平椎異形成症Torrance型」だと診断を受けました。娘が6歳の頃に遺伝子検査を受けて、確定診断に至っています。

妊娠中、お子さんに病気の疑いがあるとわかった時、どのようなお気持ちでしたか?

主治医から、娘は「自力で呼吸ができないなど重症な可能性もあるが、詳しいことは生まれてみないとわからない」と説明を受けていました。そのため、驚きやショックな気持ちがあったと思います。ただ、私も家族も「きっと、無事に生まれてきてくれるだろう」と、信じるしかなかったですね。私にとって初めての妊娠・出産だったので、そう考えないと心の準備ができなかったのかもしれません。

その後、無事に出産し、娘の自発呼吸を確認した時はホッとしました。しかし、新生児集中治療室(NICU)に入り、退院後は、泣くとチアノーゼになったので在宅酸素療法を受けました。また、ミルクの摂取が経鼻経管栄養と経口(口蓋裂用哺乳瓶)の併用だったのもあり、毎日必死に過ごしていましたね。赤ちゃんは泣くのが仕事ですが、泣かせないようにする育児が一番大変でした。ようやく呼吸に関して心配が無くなったのは5、6歳の頃だったでしょうか。

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毛利さんの娘さん
お子さんは、これまでどういった治療を受けられてきましたか?

娘は軟口蓋裂を持って生まれたので、まずその手術を受けました。その後は、6歳と10歳で網膜剥離になり手術を3回経験し、さらにペルテス病(両側大腿骨頭の壊死)を理由に2年4か月ほど入院しました。入院生活は、小学3~6年生の時期でした。娘の場合は骨の再生が難しく、入院前は問題なく走り回っていたのですが、現在は短距離しか自力で歩けず、長距離移動には車いすを使用しています。どんなに大変なことがあっても、生まれる前の主治医からの言葉に立ち返ることで、一つ一つ乗り越えて来られたのだと思います。娘は中学2年生となり、学校では生徒会で活動したり、外では車椅子ハンドボールを楽しんだり、自分らしく元気に過ごしています。

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毛利さんの娘さん

当事者向けの支援だけでなく、絵本などを通じた疾患啓発活動も

活動を始めたきっかけについて、教えてください。

希少疾患のため情報が少なかった中、娘が2歳の頃に、一つ年上の2型コラーゲン異常症の女の子を病院で紹介していただきました。症状も似ていて、娘と年齢が近かったこともあり、お会い出来た時は本当にうれしかったです。この経験から、もっと2型コラーゲン異常症の仲間とつながりたい、いろいろなお話を伺いたいという思いが芽生えました。

まずは、同じ骨系統疾患で低身長でもある軟骨無形成症患者・家族の会「つくしの会」に入会しました。日常生活での様子や入園・入学、学校生活などについて、少しでも情報を得たいと思ったからです。そして2016年、つくしの会役員の後押しもあり、2型コラーゲン異常症の仲間と共に「2型コラーゲン異常症部会」を立ち上げ、活動をスタートさせました。

そして、2023年につくしの会から独立されたんですよね。

はい。10名の本部委員を加えて、新たに出発しました。初めは6組だった仲間が、100組近くにまで増えたことと、より当疾患に焦点を当てた活動をしていきたいと考えたからです。つくしの会とは今後も、骨系統疾患のより良い未来のために協力していきたいと思っています。

現在の活動内容について、教えてください。

一番は、「当事者・ご家族の心のよりどころの一つになれたら」という思いで、活動しています。そのため、情報交換や交流の場を設けています。普段は、会員向けのLINEグループでやり取りをして、情報や相談ごとを共有しています。例えば、入園・入学の際にどのような環境設定をしたか、写真も併せて載せています。その他、医療者や成人当事者の講演会、疾患や年齢ごとなどテーマを決めた交流会をオンラインで開催しています。今後は、対面での交流会も再開したいです。先輩当事者やご家族からの体験やアドバイスを聞ける機会があるのは、心強いのではないかと思います。

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コロナ禍前に開催の講演会

当事者向けの支援活動のほか、疾患啓発活動も行っています。一般の方にも2型コラーゲン異常症を知っていただくために、パンフレットや絵本を通じて疾患情報を発信しています。今後は、疾患の紹介動画制作やSNSでの情報発信も本格的に進めていく予定ですので、多くの方々に情報をお届けできればと思っています。興味を持たれた方は、ウェブサイトをご覧ください。また、2型コラーゲン異常症の方は、ぜひ仲間になりましょう。お問い合わせフォームからご連絡ください。

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絵本は、現在2,000円(税込み+送料込み)で頒布中

その他、症状と身長・体重等の実態調査や日常生活における困り事のインタビュー調査を実施するなど、指定難病の認定に向けた活動を行っています。

当事者・ご家族とつながれる場に、「つながって良かった」の声

実際に交流会などに参加された当事者・ご家族からは、どういった声が寄せられていますか?

当事者・ご家族と「つながって良かった」という声が多く寄せられています。同じ境遇だからこそ体験や想いを共有できる場は大切だと感じています。

「先輩当事者やご家族の体験を聞けて、子どもの今後の生活をイメージできた」「入園や入学について不安に感じていたが、具体的なアドバイスをもらって前向きに考えられるようになった」「同疾患の同年代と交流できて刺激になった」「医師からは聞けない生活での注意すべき点がわかって良かった」などのコメントが寄せられています。

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コロナ禍前に開催の交流会

交流会への参加が難しい場合は、LINEの仲間からのコメントを読んでもらうだけでも良いと考えています。皆と「つながっている」と感じられるだけで、勇気をもらったり、不安な気持ちが和らいだりすることもあると思うんです。ぜひ、皆さんが参加しやすい方法で、気軽につながっていただけたらうれしいですね。

2型コラーゲン異常症を取り巻く環境では、特に、どういった課題があると感じていますか?

2型コラーゲン異常症を診療する専門の医師が少ないことは、課題の一つだと感じています。2型コラーゲン異常症は、背骨、手足、目や耳などにさまざまな症状が現れますので、複数の診療科・病院を受診している場合が多く、わざわざ県外の病院まで通っている仲間も少なくありません。

また、2型コラーゲン異常症に関わる情報や症例(患者数)の少なさも課題の一つです。私自身、娘に将来どういった症状が出るのかを知りたいと思っても、なかなか知る手段がありませんでした。自分の経験や仲間から話を聞いて感じるのは、症例数が少ないため、症状や治療について不安を抱えている当事者・ご家族がたくさんいらっしゃることです。治療に関しては、現在は対症療法しかありませんので、研究が進んで、1日も早く治療法が確立してくれる日を願っています。

また中でも特に、成人当事者の情報が不足しています。恐らく、昔は診断がつきにくかったので、正式な病名がわからずに今まで過ごしてきて、各症状や痛みに対して対症療法を受けてきたという方が多いと考えています。成人になっても治療や療養が必要ですので、そういったデータを集めて、2型コラーゲン異常症の「指定難病」認定を目指し、今後も活動を続けていきたいです。

最後に、遺伝性疾患プラスの読者にメッセージをお願いいたします。

希少疾患であることなどを理由に病気の情報が少ない場合、生活における心配や将来への不安が尽きないという方もいらっしゃると思います。そのような時は、ぜひ、同じ病気と向き合う仲間とつながってみてください。私自身も会の仲間に励まされることが多く、「自分は1人ではない」と感じ、前へ踏み出す力をもらっています。

もし、まだ患者会がない希少疾患で、同じ病気の当事者とつながることが難しい場合には、近い症状をもつ患者会を探してみてください。そこから得られる情報や交流が背中を押してくれると思います。また、医療や福祉、教育などさまざまな立場の専門家とつながることも不安な気持ちを解消する1つの手段だと思います。無理のない範囲で、ぜひご自身に合った「つながり」を作ってみてください。

最後に、病気と向き合うご家族へのメッセージとしては、親として心配は尽きないと思いますが、先回りして環境を整え過ぎず、ぜひ子ども自身の「生きる力」を信じてください。これは私が成人当事者の方から教わった言葉です。これからも子どものありのままの成長を見守っていけたら良いなと思っています。


「当事者・ご家族の心のよりどころの一つになれたら」という思いで活動している、2型コラーゲン異常症患者・家族の会。LINEでのコミュニケーションや交流会への参加など、ご自身が参加しやすい方法で当事者・ご家族とつながることができる環境が整っていました。参加されている当事者・ご家族からも、「つながって良かった」という声が寄せられているそうです。

これから、2型コラーゲン異常症と向き合っていくご家族へ「自分や他のご家族が経験してきたことを知っていただくことで、少しでも不安を減らせたら」と話してくださった、毛利さん。2型コラーゲン異常症について、知りたい情報にたどりつけず、不安な思いをされている方がいらっしゃいましたら、ぜひ2型コラーゲン異常症患者・家族の会の活動を知っていただけたらと思います。(遺伝性疾患プラス編集部)

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