ウェルナー症候群

遺伝性疾患プラス編集部

英名 Werner syndrome
別名 ワーナー症候群、成人型早老症(adult progeria)
日本の患者数 2,000人程度(発症頻度は5~6万人に1人)
子どもに遺伝するか 遺伝する(常染色体劣性遺伝)
発症年齢 思春期以降
性別 男女とも
主な症状 思春期以降の早期老化
原因遺伝子 WRN遺伝子
治療 発症した悪性腫瘍、白内障、脂質異常症などに対しては一般的な治療
もっと見る

どのような病気?

ウェルナー症候群は、思春期を過ぎる頃から急速に老いていくようにみえる、「早期老化」が特徴の遺伝性疾患です。10歳くらいまでは正常に発達しますが、20歳代から、白髪、頭髪が抜ける、両目の白内障、手足の筋肉や皮膚が痩せて固くなる、かん高くかすれた声になる、などの症状が見られます。糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、骨粗しょう症、足先や肘などに深い傷ができて治りにくくなる(難治性皮膚潰瘍)、性ホルモンの働きの低下(更年期など)、アキレス腱や皮下にカルシウム成分が溜まり痛くなる「石灰化」なども多く見られます。また、身長が低めの人が多いことも特徴です。20歳代から30歳代に、「鳥様」と表現される特徴的な顔つきが明らかとなってきます。かつては、悪性腫瘍や動脈硬化性の病気(心筋梗塞など)で、多くの人が40歳代で亡くなっていましたが、治療法が進歩したため、今では60歳代の患者さんも増えています。

日本のウェルナー症候群患者さんの数は約2,000人、病気になる確率はおよそ5~6万人に1人と推定されています。全世界で報告されているウェルナー症候群患者さんのうちの約6割が日本人であり、日本で頻度の高い病気だと認識されています。日頃の生活習慣(食べ物や運動習慣など)は、発病とは関係ないと考えられています。また、男女になりやすさの違いはないと考えられています。妊孕性は、性成熟後まもなくから低下しますが、正常な妊娠も報告されています。また、多くは若年ですが、父親となった患者さんもいます。

ウェルナー症候群は、指定難病対象疾患(指定難病191)です。

何の遺伝子が原因となるの?

ウェルナー症候群の原因として、「WRN遺伝子」の変異が見つかっています。WRN遺伝子変異は、ウェルナー症候群患者さんの約90%で検出されます。また、WRN遺伝子以外で、ウェルナー症候群との関連が明らかになっている遺伝子は、今のところありません。WRN遺伝子から作られるタンパク質は、「RecQ型のDNAヘリカーゼ(WRNヘリカーゼ )」という酵素で、細胞分裂でDNAが複製されるときや、傷ついたDNAが修復されるときなどに、DNAの二重らせん構造を、いったん巻き戻してほぐす働きをしています。DNAは、遺伝子などの、からだの設計図の本体です。そのため、WRNヘリカーゼは、体全体にとって、とても重要な役割をしています。

この、WRN遺伝子に変異があり、正常なWRNヘリカーゼが作られないと、ウェルナー症候群が発症します。しかし、この遺伝子の異常によりなぜ老化が早く進むようになるのかは、まだ完全には解明されていません。一方で、染色体の末端には「テロメア」と呼ばれる、細胞の寿命にも関連した構造があるのですが、WRNヘリカーゼが、この構造の維持に極めて重要であるという研究報告もなされています。

WRN遺伝子の変異は、常染色体劣性遺伝形式で、親から子へ遺伝します。人間が2本1セットで持っているWRN遺伝子のうち、両親がともに1本ずつ変異を有していた場合、子どもは4分の1の確率で2本とも変異を有してウェルナー症候群になります。また、2分の1の確率で1本変異を有し発症はしない「保因者」となり、4分の1の確率でウェルナー症候群を発症せず保因者でもなく(変異した遺伝子を持たず)生まれます。かつては、主に血縁が濃くなる近親婚(いとこ婚など)の多い地域で報告が多くありましたが、近年は、近親婚によらない発症者も増加しています。

常染色体劣性遺伝

どのように診断されるの?

ウェルナー症候群には、医師がウェルナー症候群と診断するための「診断基準」があります。したがって、病院へ行き、必要な問診や検査を受けた後、主治医の先生がそれらの結果を診断基準に照らし合わせ、結果的にウェルナー症候群かそうでないかの診断をすることになります。具体的には、10歳から40歳までに現れた主要兆候(白髪や脱毛などの早老性毛髪変化、両目の白内障、皮膚の萎縮・硬化・潰瘍形成、アキレス腱等の石灰化、鳥様の顔だち、かん高いしわがれ声)の全てが当てはまった場合、もしくは3つ以上が当てはまり、遺伝子検査でWRN遺伝子に変異があるとわかった場合には、ウェルナー症候群と確定診断されます。また、主要兆候のうち、白髪や脱毛などの早老性毛髪変化と両目の白内障が見られ、加えて、それ以外の主要兆候およびその他の兆候(糖・脂質代謝異常、骨粗しょう症など骨の異常、非上皮性腫瘍または甲状腺がん、血族結婚、早期の狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患、原発性性腺機能低下、低身長および低体重)から2つ以上の兆候が見られた場合、ウェルナー症候群の疑いと診断されます。

また、早期老化症状が一般的にウェルナー症候群より若年から発症し、日本での発症が非常にまれである「ハッチンソン・ギルフォード症候群(Hutchinson-Gilford progeria syndrome)」「ロースムンド・トムスン症候群(Rothmund-Thomson syndrome)」「ブルーム症候群(Bloom syndrome)」との鑑別診断も行われます。重症度分類もなされています。

どのような治療が行われるの?

今のところ、ウェルナー症候群を根本的に、つまり、遺伝子から治すような治療法は見つかっていません。白髪や皮膚の変化などの「見た目の老化」を予防・治療する方法もありません。

足に傷ができると治りにくく、実際に、感染を繰り返して足を切断してしまうなど、多くの患者さんが日常生活に大きな支障をきたしています。そのため、普段から、靴ずれを起こさないように靴に当たる部分を保護するなど、足の傷の予防が重要です。傷が出来てしまった場合には、洗浄、消毒、保護、保湿などの対症療法が中心となります。自分の体の別の部位から皮膚を移植する手術をする場合もあります。

悪性腫瘍や白内障、糖尿病、脂質異常症などに対しては、一般にそれぞれの病気に対して行われるのと同様な手術や薬での治療が行われます。定期通院をして、検査を受けることにより、こうした病気を早期発見・早期治療することは重要です。

どこで検査や治療が受けられるの?

日本でウェルナー症候群の診断や治療を行っている、主な施設は以下です。

患者会について

ウェルナー症候群の患者会で、ホームページを公開しているところは、以下です。

遺伝性疾患に関するお悩み募集 あなたの「体験談」を聞かせてください

参考サイト

参考文献:医学書院 医学大辞典 第2版