ウェルナー症候群の診療ガイドライン、世界中の治療のために英語で発表

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ウェルナー症候群の診療ガイドラインを、国内研究グループが世界で初めて英語で発表
  2. 主な内容は、ウェルナー症候群に合併する糖尿病など8つの合併症
  3. 世界中のウェルナー症候群の治療が標準化され、QOL向上に寄与することに期待

日本語版ガイドラインをベースに最新情報を加え、英語で発表

千葉大学を中心とした国内8機関14人からなる研究グループは、遺伝性早老症「ウェルナー症候群」の診療ガイドラインを英語で発表しました。

このガイドラインは、2012年に発表された日本語版の診療ガイドラインに、1996年から2020年までの臨床論文のレビューや最新の治療経験を加えたもの。より実際の診療に即した診療ガイドライン(management guideline)を作成し、英文として発表されました。

ウェルナー症候群に合併する、脂質異常症・脂肪肝、サルコペニア、糖尿病、骨粗しょう症、感染症、皮膚潰瘍(皮膚科治療)、下肢潰瘍(形成外科治療)、アキレス腱石灰化という8項目が主に扱われています。

「早く老いる」病気、世界の報告の6割が日本人

ウェルナー症候群は、20歳代から白髪、脱毛、両目の白内障、手足の筋肉や皮膚もやせて固くなり、急速に老化が進んでいくようにみえることから、「早く老いる」病気=早老症のひとつといわれています。国内の推定患者数は推計700~2,000人、世界の報告の6割を日本人が占める病気です。

1996年にウェルナー症候群の原因遺伝子はわかりましたが、そのメカニズムは十分には明らかになっておらず、根本的な治療法はまだありません。かつては、多くのウェルナー症候群の患者さんが40歳代で悪性腫瘍や心筋梗塞などにより亡くなっていましたが、今では治療法の進歩により、寿命が延びてきています。

寿命は延びたものの、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)などの代謝性疾患、動脈硬化性疾患、悪性腫瘍(主に肉腫)を合併することが多く、加えてひざから足首、足部を中心として深い傷がいつまでも治らない難治性の皮膚潰瘍が多く見られます。

ウェルナー症候群との診断に至らない患者さんや、診断を受けても適切に治療を受けられていない患者さんも多く、日常生活の苦労を強いられています。

「この診療ガイドラインが用いられることにより、日本国内のみならず世界中のウェルナー症候群の治療が標準化され、患者さんの生命予後やQOL向上に寄与することが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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