【西】の専門医・大薗恵一先生より、読者のみなさんへメッセージ

遺伝性疾患プラス編集部

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希少難病の当事者の皆さんのご苦労というのは、非常に我々ではわからないところまであると思うんですけれども、「まれである」とか「非常に珍しい」とか言われますと、それだけで、孤独感とか疎外感とか、そういうものがわき起こってくると思います。

しかしながら、希少難病というのは、病気の数で言いますと7,000あるいはそれ以上とも言われており、大体20人に1人は希少難病にかかっているとまで言われています。従って、ちょっと視点を変えて、「希少難病にかかってる人ってどれぐらいいるのかな?」というと、もう全然まれでない、例えば、学校でしたら1クラスに2、3人いるというような状況なんですね。

だから、それ自体がすごくまれというわけではない。しかしながら、確かに、個々の病気はやはり性質も違いますから、まずそもそも「診断がついていない」というような悩みや、「治療法がない」というような悩み、「治療法はあるけれどもずっと注射したり薬を飲んだりしないといけない」という問題もあるかと思います。

こういうふうに、希少難病にかかっておられる当事者の皆さんが抱える問題点もさまざまかと思います。これも、しかし少し視点を広げて考えますと、世界的には、「日本は希少難病の医療においては一流」と言える頑張りを見せてると思うんですね。例えばお薬で言いますと、希少難病の薬は割と早く日本に導入できているような状況になっています。

それから、医療費についても、いろんな医療制度(指定難病をはじめとして)があり、それほど負担なく使えることが多い、ということもあり、個々の患者さんの悩みまで全部は答えられてないかとは思いますが、おしなべて考えると、日本は頑張っている方でないかな、というふうに思っております。

それから、専門医が少ないという問題ですが、どうしても、この専門医というのが、「病気に特化した」というよりは、「その分野に特化した」というような感じ、例えば、神経であったり、内分泌であったり、消化器であったり、そういう分野に特化した形で、患者さんをある程度の数、診ないといけないというような縛りもあって、なかなか非常に「希少難病に特化した専門医」というのは、いないのが現状だと思うんですね。そのときに、疾患のことでは専門でなくても、その症状については専門なんだというような形で、医療者と付き合っていただくというのも重要なことじゃないかなと私は感じております。その中で、新たな情報とか、あるいは間違った情報を修正するとか、そういうコミュニケーションが生まれてくるんじゃないかなというふうに思ってます。

まだまだ「患者さんのために」という点では、やることはたくさんあると思いますので、私も、まだ頑張っていきたいと思っております。以上です。

【西】の専門医:大薗恵一先生

大阪大学名誉教授・医誠会国際総合病院 難病医療推進センター センター長。医学博士。大阪大学医学部を卒業後、済生会富田林病院、大阪大学医学部付属病院、Baylor College of Medicine(Research Associate)、大阪府立母子保健総合医療センター検査科診療主任、同センター研究所環境影響部門部長、大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学小児発達医学講座教授、同研究科情報統合医学小児科学講座教授等を経て2023年4月より現職。日本小児科学会専門医・指導医、日本内分泌代謝科(小児科)専門医、日本骨粗鬆症学会認定医。日本小児科学会理事、日本内分泌学会理事、日本骨代謝学会理事、日本ステロイドホルモン学会理事、日本小児内分泌学会理事等、学会役員多数の学会で役員を歴任。