【東】の専門医・齋藤加代子先生より、読者のみなさんへメッセージ

遺伝性疾患プラス編集部

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東京女子医科大学ゲノム診療科の齋藤加代子です。日本は島国で、とても小さい国ですが、国内を移動するための交通手段は、非常に世界の中でも発達している国の一つです。しかし、遺伝性疾患を持つ方たちは、運動機能障害があったり、移動や活動の制限が大変多い方たちがいらっしゃいますので、遠い地域に医療を求めて移動することは大変困難ではないかなというふうに思います。

また、交通費もばかにならない非常に高い状態でありますので、そういった経済的な問題としても、移動が難しい場合もあると思います。でも、医療における地域の差があるために、東京に住んでいると、地方から患者さんがいらしてくださることも多く、全国のいろいろな患者さんからのご相談をお受けすることも致しております。

こういった医療の差を乗り越えるためには、どういうものが必要かというと、今発達しているインターネットや、病気を抱えて、特に遺伝性の疾患を抱えている状態である場合には患者さんの登録です。患者さんの登録(疾患登録)をしていただくと、コミュニケーションがスムーズになるかなと思います。また、情報も入りやすくなると思います。私が専門にしている脊髄性筋萎縮症(SMA)においては、2012年に患者さんの登録をスタートしました。

治験に備えるということで、患者さんに登録していただいたところ、世界中から国際共同治験の申し出があり、それで、3つの大きい海外の会社からの治験をそれぞれお受けして、患者さんの登録(「SMARTコンソーシアム」という名前で今もやっているんですが)、SMARTコンソーシアムに登録してくださった患者さんたちにお声掛けして、それが元で、日本で脊髄性筋萎縮症のお薬が認められたという歴史がございます。

ですから、コミュニケーションを良くする、それから、情報を得る手段として患者さんの登録をする、登録をした状態で医療のネットワークをきちんと構築して、また患者さん同士もつながるということが、今の医療においては、先進的で、新しい情報を得るのに重要な方法じゃないかなと思います。それによって、医療の進歩と、医療側からの発信、そして、患者さん側からの連携のネットワーク、こういったことが、医療の質を向上させて、難病の新しい治療にまたつながっていくと考えております。

以上が私からの一言でございます。よろしくお願いいたします。

【東】の専門医:齋藤加代子先生

東京女子医科大学医学部名誉教授・特任教授。医学博士。東京女子医科大学医学部を卒業後、同大小児科学教室の助教、専任講師、准教授、教授を経て、2004年より現職。日本遺伝カウンセリング学会前理事長。日本人類遺伝学会前理事。文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会委員。臨床遺伝専門医(指導責任医)。小児科専門医、小児神経専門医。難病指定医。