小澤敬也先生より、読者の皆さんへメッセージ

遺伝性疾患プラス編集部

「日本における遺伝子治療2023」Topに戻る

遺伝子治療の開発研究は、世界的には大変活発になってきています。我が国では、再生医療に、国家プロジェクトとして力を入れてきていました。そのためもあって、遺伝子治療については立ち遅れてしまいました。

しかし、最近になってようやく国としても、遺伝子治療の重要性に気付いて、本格的に取り組み始め、研究費も増えつつあります。研究費が出て、すぐに成果が出てくるわけではありませんが、これから遺伝子治療の開発に取り組む若手研究者が増えてくると思います。

今後、着実に臨床開発も進んでいくと思います。また、このところゲノム編集治療の研究が急速に進み始めており、究極的な遺伝子治療も現実味を帯び始めています。今後の遺伝子治療の発展に大いに期待していただきたいと思います。

私自身は、遺伝子治療の研究に取り組み始めて、もう30年近くなりますが、本当に時間がかかって、参ってしまっています。先ほど言いました、日本がひたすら再生医療に向かっていた頃、周りの人が皆そちらに向かっていっても、しぶとく遺伝子治療をずっと継続してきていて、周りからは、「まだ、そんなことをやっているの?」などと皮肉を言われたりしていました。けれども、ようやくここにきて、日本も本格的に遺伝子治療の実用化を進めていこうという形になってきましたので、時間はかかりましたけれども、その成果がこれからどんどん出てくるように、願っているところであります。以上です。

小澤 敬也 先生

自治医科大学名誉教授・客員教授、同 難治性疾患遺伝子細胞治療開発講座(責任者)、同 遺伝子治療研究センター(CGTR)シニアアドバイザー。医学博士。1977年に東京大学医学部を卒業後、東京大学医学部助手、米国国立衛生研究所(NIH)博士研究員、東京大学医科学研究所助教授、自治医科大学教授、東京大学医科学研究所附属病院長などを経て、2018年より現職。日本医療研究開発機構(AMED) 再生医療等実用化研究事業 プログラムスーパーバイザー、同機構 再生医療等実用化基盤整備促進事業 プログラムスーパーバイザー、同機構 再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(非臨床PoC取得研究課題) プログラムオフィサーなど、公職多数。