遺伝性疾患・難病患者さんに関わる「医療費・公的支援」-助成・控除など制度概説

遺伝性疾患プラス編集部

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遺伝性疾患や難病の診断を受けている方を対象とした「医療費の軽減」に関する情報をまとめたページです。特に、診断を受けたばかりの方、どんな制度があるかよくわからないという方に向けて「どういう制度があるのか」に関する情報を紹介します。
※具体的な手続き方法や福祉、介護等に関する情報については触れていません。
※2024年2月15日までの情報を基に作成しています。


「医療費控除」「高額療養費」「医療費助成」について

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遺伝性疾患や難病の患者さんの医療費を軽減できる制度として「医療費控除」「高額療養費」「医療費助成」などがあります。

日本では、医療保険制度(「健康保険(協会けんぽなど)」「共済組合」「国民健康保険(国保)」「後期高齢者医療制度」)のもと、窓口で払う医療費は原則3割。小学生未満と70歳~74歳が2割、75歳以上が1割となっています(75歳以上でも一定以上の所得がある場合は2割)。保険証を利用し、その残りの自己負担分について、さまざまな制度の助成制度を受ける流れです。

医療費控除は、一定額を超えた場合に所得控除を受けられる、税金に関する制度。高額療養費は、1か月の医療費が、年齢や所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた額が支給される制度で、保険証を持っている人は利用できます。そして、医療費助成は、一部の慢性に経過する疾患など、医療を受ける際にかかった費用の一部を国や自治体が支援してくれる制度です。利用するには、自治体などに申請して認定されることに加え、更新(1年ごと)が必要です。年齢や疾患、重症度、所得等によってそれぞれ利用できる制度、助成される金額、自己負担が異なります。

各制度の概説

高額療養費制度

医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月で上限額を超えた場合、その超えた額が支給される制度。上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担をさらに軽減するしくみもある。保険適用される診療に対して支払った自己負担額が対象となる。「差額ベッド代」「先進医療にかかる費用」等は、高額療養費の支給対象外。

詳細:厚生労働省 高額な外来診療を受ける皆さまへ

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出典:厚生労働省. 高額療養費制度を利用される皆さまへ[https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf ]より転載(2024年2月15日閲覧)

小児慢性特定疾病の医療費助成制度

18歳未満で「小児慢性特定疾病」に関連してかかる医療費のうち、指定医療機関での治療(保険適用)と入院時の食事代の自己負担分の一部が助成される制度。下記の全ての要件を満たし、厚生労働大臣が定めるもの。

  • 慢性に経過する疾病であること
  • 生命を長期に脅かす疾病であること
  • 症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
  • 長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病であること

所得により自己負担の上限が異なる。18歳到達時点で対象になっており、かつ、18歳到達後も引き続き治療が必要と認められる場合には、20歳未満も対象となる。

詳細:小児慢性特定疾病情報センター 医療費助成

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出典:小児慢性特定疾病のための医療費助成制度(https://kodomo.kouhi.jp/)より転載(2024年2月15日閲覧)

※他制度との併用について

「小児慢性特定疾病の医療費助成制度」と「乳幼児・子ども医療費助成」は併用可能。その場合は、小児慢性特定疾病の医療費助成制度が負担する分が先に引かれ、次に乳幼児・子ども医療費助成が負担する分が引かれ、最後に残った金額を支払うことになる。

併用に関する詳細:小児慢性特定疾病のための医療費助成制度


特定医療費(指定難病)

指定難病およびその指定難病に付随して発生する傷病に関する医療を、都道府県・指定都市が指定した難病指定医療機関で受診した場合に限り受けることができる制度指定難病と診断され、重症度分類等に照らして、病状が一定程度以上(日常生活または社会生活に支障があると医学的に判断される程度)の場合に対象となる。患者負担は、世帯の所得に応じた「負担上限額」か、医療費の2割(75歳以上は1割)のいずれか低い方になる。

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出典:難病情報センターホームページ (https://www.nanbyou.or.jp/ )より転載(2024年2月15日閲覧)

-軽症高額該当

症状の程度が疾病ごとの重症度分類等に該当しない軽症者でも、「高額な医療を継続することが必要」な場合は対象となる。具体的には、医療費総額が33,330円を超える月が年に3回以上ある場合

-高額かつ長期

高額な医療が長期的に継続する場合に利用できる制度。対象となるのは、指定難病に係る医療費総額が5万円を超える月が、1年で6回以上ある場合。(医療保険で2割負担の場合、医療費の自己負担が1万円を超える月が年間6回以上ある場合が該当

※他制度との併用について

「指定難病と医療費控除」の併用は可能。「高額療養費制度と指定難病による医療費助成」を併用する場合には、まず高額療養費制度が先に適用され、高額療養費制度を適用した残りの自己負担額に対して、指定難病の医療費助成制度が適用される。(参照:社会保険研究所 編. 公費医療・難病医療ガイド 令和5年10月・令和6年4月改正対応版. 社会保険研究所, 2023.)

詳細:難病情報センター


自立支援医療費助成

心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する制度。「更生医療」(18歳以上)、「育成医療」(18歳未満)、「精神通院医療」(年齢制限なし)の3つからなる。

助成対象となる例

-更生医療、育成医療

  • 肢体不自由・・・関節拘縮で人工関節置換術を受ける
  • 視覚障害・・・白内障で水晶体摘出術を受ける
  • 内部障害・・・心臓機能障害で弁置換術、またはペースメーカー埋込術を受ける 腎臓機能障害で腎移植、人工透析を受ける

-精神通院医療

  • 精神疾患・・・向精神薬、精神科デイケア等

詳細:厚生労働省 自立支援医療制度の概要


乳幼児・子ども医療費助成

医療機関等で保険証を使って診療・調剤を受けたときに、医療費(診療・薬剤費)の自己負担分を市区町村が助成する制度。対象となる小児(年齢)、負担割合は自治体によって異なる。


重度心身障害者(児)医療費助成制度

障害のある方が、病気などで医療機関にかかったときの保険診療の一部負担金を助成する制度。制度の呼び方や、助成を受けるための条件(障害者手帳の等級、所得制限)や助成内容は自治体によって異なる。

違いの例:

  • 東京都「心身障害者医療費助成制度(マル障)」
  • 埼玉県「重度心身障害者医療費助成制度」
  • 名古屋市「障害者医療費助成制度」
  • 対象条件の1つが「身体障害者手帳1級か2級」の場合もあれば3級までのところもある

医療費控除

1年間(1月1日~12月31日)で支払った医療費が一定額を超えるときに、所得控除を受けることができる。最高200万円。高額療養費制度との併用可。診療にかかった交通費のうち、公共交通機関を利用した場合は控除対象となる。

詳細:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)


特定の疾病に対する助成

先天性血液凝固因子障害等治療研究費による医療費助成

対象疾患:血友病A、血友病B、HIV

特定疾患治療研究事業による医療費助成

対象疾患:スモン、プリオン病(ヒト由来乾燥硬膜移植によるクロイツフェルト・ヤコブ病に限る)、難治性肝炎のうち劇症肝炎、重症急性膵炎(※新規申請受付はなく継続申請のみ)

都道府県が単独で指定難病とした疾病に対する助成制度

各都道府県で対象となる疾患が異なり、対象疾患かどうかは都度確認が必要


詳しくは、厚生労働省のウェブサイト、医療機関や難病支援センター、お住まいの市区町村など自治体の窓口などでご相談をお願いいたします。(遺伝性疾患プラス編集部)