ワークショップのテーマは「地域とまざる・つながる・つくる」
日本遺伝看護学会による「第19回日本遺伝看護学会学術大会」が、9月19日(土)・20日(日)にオンラインで開催されました。今回の大会テーマは、「まざる、つなぐ、つくる遺伝看護-ひとりと家族と社会へ-」。2日目に開催されたワークショップでは、「地域とまざる・つながる・つくる」と題して、家族会、支援者、市民が対話し、それぞれの立場から、遺伝性疾患患者さんとそのご家族への支援などを考えました。
まず、骨形成不全症の内田勝也さんが、当事者の立場から講演。内田さんは、佐賀市役所の職員であり、「〇〇な障がい者の会」(まるまるなしょうがいしゃのかい)の会長を務められています。骨形成不全症は、骨折のしやすさや骨の変形といった症状が現れる先天性の疾患。内田さんは、幼少の頃から車椅子を使って生活する日々を過ごしてきました。「何で(自分は)みんなと同じようなことができないのだろう」と感じ、悔しさから泣いた日もあったと言います。しかし、「障がいがあるからこそ、伝えられることがあるはず」と考えるようになり、「〇〇な障がい者の会」を立ち上げました。現在、障がいのある立場からの情報発信や、障がいのある人の外出促進活動などを行うなど、精力的に活動をされています。
続いて、2型コラーゲン異常症の疑いのあるお子さんをもつ永石美恵子さんが、患者家族の立場から講演。2型コラーゲン異常症は、その多くで2型コラーゲン(COL2A1)遺伝子に変異が認められ、X線による所見が類似している複数の疾患の総称です。地域との関わりについて「最初は、地域の方々との距離を感じていた」という永石さん。しかし、お子さんが学校に通うようになり、徐々に地域の方々と触れ合う時間が増えたそうです。これがきっかけで、地域の方々によく声をかけてもらえるようになり、今では、「地域の子どもとして、皆さんが見守ってくれている」と、実感しているそうです。
次に、患者家族会「ひとやすみの会」代表の幸篤志さんが、「パパ」の立場で講演。幸さんのお子さんは、1q部分重複症候群という、日本には患者さんが約30人しかいないとされる希少疾患を抱えています。お子さんが診断を受けたとき、「長くは生きられないと思った」という幸さん。そこで、お子さんを支えるために仕事を辞める決意したのだそうです。グループに分かれてのトークセッションでは、「パパ支援も含めて、個別に対応可能な支援サービスがあったらいいと思う」という意見が、寄せられました。
最後に支援者の立場からの発表があり、難病医療コーディネーターの小栁みどりさんが講演。寄せられる遺伝性疾患の相談内容として、「(遺伝性疾患について)どこまでを子どもに話したらいいのか」「将来や就労について不安」といった内容を紹介しました。トークセッションでは、「国の支援制度を、わかりやすく伝えることが大切なのでは?」という意見や、「遺伝性疾患に対する社会全体の理解向上が必要」という声も挙がりました。
患者さんが、楽しく安心して暮らせる社会を目指して
今回のワークショップでは、遺伝性疾患に関わるそれぞれの立場からの発表を通じて、多くの課題が浮き彫りとなりました。当事者の内田さんは、最後に「たったの一度の人生だから、(患者さんが)楽しく生きられる、安心して暮らせる社会をつくることが大切だと感じている」と、コメント。支援者の福田亜紀子さんは、「(患者さん支援を)さまざまな立場から考えられるようになりたい」と述べました。
遺伝性疾患に対する正しい理解はもちろん、患者さん、ご家族、支援者の方々の声が社会に広く届いていくことを期待します。(遺伝性疾患プラス編集部)