パーキンソン病とライソゾーム病に共通して影響する物質を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. パーキンソン病とライソゾーム病の両方の発症に影響している酵素を特定
  2. その酵素は「アリールスルファターゼA」で、病気になりやすいタイプとなりにくいタイプがあることが判明
  3. アリールスルファターゼAはパーキンソン病に合併する認知症の診断マーカーとなる可能性

細胞内の老廃物分解酵素「アリールスルファターゼA」が関与

順天堂大学は、「アリールスルファターゼA」という酵素が、パーキンソン病とライソゾーム病の両方の発症に影響していることを特定しました。

パーキンソン病は、手足の震えや身体の動かしづらさなどの症状が出る神経難病。ライソゾーム病も難病で、肝臓、腎臓、骨、神経などにさまざまな症状があらわれる病気です。ライソゾーム病は、細胞内小器官「ライソゾーム」の中で、細胞内の老廃物が酵素の異常により分解できなくなることで発症します。「アリールスルファターゼA」はライソゾームの働きに関わる酵素のひとつです。

ライソゾーム病患者さんの約6割にパーキンソン症状などの神経症状がみられ、原因遺伝子のひとつGBA遺伝子はパーキンソン病の発症リスクとなるなどの理由から、パーキンソン病はライソゾーム病と関連が強いことがわかっていました。また、研究グループは以前、ライソゾーム病のひとつである異染性白質ジストロフィー患者さんの近親に、パーキンソン病患者さんが複数いる家系を特定していました。そこで今回の研究では、ライソゾーム病、および異染性白質ジストロフィーの原因とされるアリールスルファターゼAが、パーキンソン病に直接関与していると予測し、検証する研究を行いました。

神経難病の新しい診断・治療薬となる可能性

研究グループはまず、異染性白質ジストロフィー患者さんで、近親がパーキンソン病を発症している家系の遺伝子検査を行いました。その結果、パーキンソン病を発症している人のアリールスルファターゼA遺伝子には、「L300S」という変異があり、異染性白質ジストロフィー患者さんのアリールスルファターゼA遺伝子にはL300Sと「C174Y」という2つの変異があることを見つけました。

さらに、184人のパーキンソン病患者さんと約3,000人の健康な人で、アリールスルファターゼAの遺伝子配列を比較。その結果、「N352S」という遺伝子のタイプ(遺伝子多型)をもつ人はパーキンソン病になりにくいことを発見しました。さらにこれらの遺伝子について詳しく調べたところ、L300Sは病気を悪化させる遺伝子タイプで、N352Sは病気を予防する遺伝子タイプの可能性があることが示されました。

また、認知症を合併するタイプのパーキンソン病と、合併しないタイプのパーキンソン病の患者さんを比較して、血液中のアリールスルファターゼAを調べたところ、認知症を合併するタイプでは、アリールスルファターゼAの量が減っていることが判明。血液中のアリールスルファターゼAの量と認知症の程度が関係していることも発見しました。

今回の研究から、アリールスルファターゼAは、認知症に対する早期バイオマーカーや診断薬となる可能性があることがわかりました。さらに、「N352S」遺伝子多型のあるアリールスルファターゼAの量を増やすことで、パーキンソン病や認知症が改善する治療薬の開発が期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク