新生児3,000~6,000人に1人の頻度で見つかる22q11.2欠失症候群
大阪大学は、指定難病の「22q11.2欠失症候群」において、原因遺伝子の欠損により、糖代謝異常が引き起こされている可能性があることを明らかにしました。
この病気は、染色体22番のq11.2という部分が一部欠損していることで、心疾患、免疫不全、腎泌尿器疾患などのさまざまな重篤な先天性障害をきたすことが報告されています。最近の推定では、1,000胎児当たり約1個体の頻度で発見され、新生児では3,000~6,000人に1人の頻度とされています。この病気に関わる重要な遺伝子として「TBX1」が候補に挙がっていましたが、TBX1の変異を認めない患者さんも多く存在し、また、重篤度なども個人差が非常に大きいため、発症メカニズムは複雑だと予想されていました。
CRKとCRKL遺伝子の欠損により、糖代謝制御異常が引き起こされる
これまでの海外の研究で、「CRKL」と呼ばれる遺伝子が欠失すると、胎生期に心血管形成を含む臓器の異常が引き起こされるため、この遺伝子が22q11.2欠失症候群の原因である可能性があることが報告されていました。それを踏まえ、今回の研究では、CRKL遺伝子と、その仲間である「CRK」遺伝子に着目し、実験用マウスモデルを作製して解析をしました。その結果、2つ1セット(父親由来と母親由来)で持つ遺伝子の2つともがCRKLまたはCRKで欠損(ホモ欠損)していた場合か、CRKとCRKLの両方の遺伝子で1つずつ欠損(ヘテロ欠損)していた場合に、22q11.2欠失症候群に似た形態異常が現れることがわかりました。
さらに、モデルマウスの細胞を詳しく解析すると、糖代謝系の制御が異常になっていることも発見されました。CRKとCRKLは、両方とも「シグナル伝達系」と呼ばれる、環境と細胞内の遺伝子調節や代謝などを制御する生化学反応を司るタンパク質として知られています。
今回の研究で、22q11.2欠失症候群の発症メカニズムの少なくとも一部には、糖代謝障害が関わる可能性が示されました。「胎生期の栄養などのコントロールにより、糖代謝の改善を通した、22q11.2欠失症候群の新しい治療法の開発につながることが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)