止血系のバランスを調整し、出血を予防することを目的に設計されたRNAi治療薬
仏サノフィ社は、開発中の新規RNAi治療薬「フィツシラン(fitusiran)」を、インヒビターの有無を問わず血友病AおよびBの患者さんに投与した臨床試験で、中間解析の結果、良好な長期有効性が示されたことを発表しました。
フィツシランは、血液が固まるのを阻害する「アンチトロンビン」というタンパク質を標的とし、血液を固めるはたらきがある「トロンビン」という酵素の産生を促すことで、自然な形で止血できるように調整し、出血を予防する目的で設計されています。
同試験は、フィツシランの臨床試験に参加した経験のある中等症または重症の血友病AおよびBの患者さん(インヒビターの有無を問わない)を対象に、長期的な有効性と安全性を評価した試験です。フィツシランを1か月に1回、50mgまたは80mgの固定用量で皮下注射して投与しました。
アンチトロンビン値が持続的に低下、年間出血率は低値に
最長4.7年間(中央値2.6年間)、この治療を受けた試験参加者34人のデータを評価したところ、アンチトロンビン値が持続的に低下し(ベースラインから約75%低下)、トロンビンのピーク値(中央値)は、健康被験者でみられる範囲の下限に相当する値となったことがわかりました。
年間出血率の中央値は0.84(回/年、以下単位省略)。細かく見ると、インヒビター非保有患者さんでは1.01(試験開始前は、定期補充療法を受けていた場合で2.0、オンデマンド療法を受けていた場合で12.0)、インヒビター保有患者さんでは0.44(試験開始前は42.0)でした。年間自然出血率は低値(被験者全体の中央値0.38)という結果が得られました。
安全性について、抗薬物抗体の産生は認められず、フィツシランの忍容性はおおむね良好でした。同薬の投与に伴う重篤な有害事象として、心房血栓症1例、肝臓トランスアミナーゼ上昇1例が報告されました。試験中の2017年に1人の患者さんが死亡しています。5例以上報告があった有害事象は、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(29%)、頭痛(27%)、注射部位紅斑(21%)、鼻咽頭炎(21%)などでした。
現在も評価が継続されており、結果は2021年上半期に判明する予定です。(遺伝性疾患プラス編集部)