ライソゾーム病の原因遺伝子の1つが、パーキンソン病の発症にも関わることを発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. プロサポシン遺伝子は、ライソゾーム病の原因遺伝子の1つ
  2. パーキンソン病患者さんで、プロサポシン遺伝子の「サポシンD」という領域に変異を発見
  3. 細胞実験と動物実験で、この変異がパーキンソン病発症と関わることが証明された

家族性パーキンソン病患者さんのDNA検査で、ライソゾーム病の原因遺伝子の変異を発見

順天堂大学を中心とした研究グループは、ライソゾーム病の原因の1つとされる「プロサポシン遺伝子」が、パーキンソン病の発症に関わっていることを発見しました。

パーキンソン病患者さんは国内に約15万人います。最新の研究で、パーキンソン病の発症に、遺伝性代謝性疾患であるライソゾーム病の病態メカニズムが関与する可能性が指摘されていますが、どのように関与するか詳しいことは不明のままです。

研究グループはまず、国内の家族性パーキンソン病患者さん290人のDNAを解析して、ライソゾーム病の原因とされる「プロサポシン遺伝子」の変異を調べました。この遺伝子から作られるプロサポシンタンパク質は、細胞内消化器官のライソゾーム内で、サポシンA、B、C、Dの4つに分解されます。遺伝子検査の結果、3家系から、プロサポシン遺伝子のうち、「サポシンD」が作られる部分(領域)に遺伝子変異が発見されました。

孤発性のパーキンソン病患者さんでも同じ遺伝子に特定のDNA配列

次に、孤発性(両親は病気ではなく、子どもで初めて発症)のパーキンソン病患者さんにもサポシンDの遺伝子変異が関連しているかを調べるため、日本と台湾の計1,105人の孤発性パーキンソン病患者さんのDNAを解析しました。すると、サポシンD領域の2か所で、特定のDNA配列(遺伝子多型)を持っている人が多いことがわかりました。

さらに、サポシンD領域の変異や遺伝子多型が本当に病態と関わっているかを確かめるため、サポシンD領域に遺伝子変異をもつパーキンソン病患者さん由来のiPS細胞を用いた実験、患者さんと同じ遺伝子変異を持つマウスを用いた実験も行われました。その結果、サポシンDの遺伝子変異や遺伝子多型がパーキンソン病に関係することが確認されました。

「今後、サポシンの機能を正常化する薬剤を開発することで、パーキンソン病の根治治療に近づく可能性があります」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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