重症型の遺伝子変異があると20代で末期腎不全となる病気で、根治療法はない
重症型の遺伝子変異を有するアルポート症候群患者さんに対して、「核酸」を用いた新たな治療薬が開発され、モデル動物を用いた検証により、顕著な効果が確認されました。
アルポート症候群は腎炎、難聴、目の合併症(円錐水晶体や白内障など)を伴う遺伝性の疾患で、特に男性で重い症状が現れます。男性患者さんでは、40歳までに90%が腎不全になり、透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要になります。特にアルポート症候群の原因遺伝子4型コラーゲンの「COL4A5」に重症型の変異があると、20歳代前半で末期腎不全に進行することが知られています。
「重症型を軽症型にする」核酸医薬、モデル動物で腎不全進行を抑制
神戸大学らの研究グループと第一三共は、アルポート症候群に対して「核酸医薬」という種類の治療薬を共同で開発しました。核酸医薬とは、遺伝子に含まれるDNAやRNAなどの核酸を基本骨格とする医薬品で、タンパク質にはたらきかけるよう設計される従来の医薬品とは異なります。今回、開発されたのは、重症型変異のあるCOL4A5遺伝子に働きかける核酸医薬で、「エクソンスキッピング」という方法により、軽症型変異を持つ4型コラーゲンが作られるようにするものです。
開発した核酸医薬を、COL4A5に重症型の変異を有するモデルマウスに投与したところ、腎機能悪化を抑制し、生存期間も著明に延長。腎不全進行に対して著効することがわかりました。
研究グループは、モデル動物において薬剤の投与量の決定および安全性を評価する試験を進行中であり、これらの評価が終了後、患者さんに対する治験を行う予定です。
「この研究成果は、現在まで根治療法の無いアルポート症候群に対する、世界で初めての特異的治療法の開発に大きく貢献することが期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)