核酸医薬として応用が期待される「SINEUP」、作用のメカニズムを解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 「SINEUP」は核酸の仲間で、タンパク質合成の過程で働く
  2. 今回、SINEUPがタンパク質合成を促す詳細な仕組みが明らかに
  3. 「ハプロ不全」などが原因となる遺伝性疾患の治療薬への応用が期待される

SINEUPは、タンパク質がつくられる過程で働く核酸の仲間

理化学研究所のグループは、核酸医薬への応用開発が行われている「SINEUP」が、タンパク質の合成にどのように働きかけ促進しているか、その詳細なメカニズムを解明しました。

SINEUPは、「長鎖ノンコーディングRNA」と呼ばれる、核酸(DNAやRNA)の仲間で、生体内で遺伝子からタンパク質がつくられる途中の「翻訳」という過程で働きます。

SINEUPは細胞内の核に存在し、翻訳の機能を調整しているということまでは、これまでにわかっていました。しかし、翻訳は細胞質(核の外、リボソームという細胞内小器官)で行われるため、SINEUPが核から細胞質へ移動する必要があります。そのメカニズムについて今回研究が行われました。

「ハプロ不全」が原因となる病気の核酸医薬として期待

今回の研究でわかったことは、SINEUPは細胞核でタンパク質の鋳型となる「mRNA」という物質、および、2つのタンパク質(HNRNPタンパク質、PTBP1タンパク質)と一緒になって複合体を形成し、細胞質に移動するということ。細胞質に移動した複合体は、リボソーム複合体に働きかけ、核からそこまで一緒に移動したmRNAを鋳型としたタンパク質合成を促進していました。

2つセットでもつ遺伝子の1つが変異し、残り1つの正常な遺伝子だけでは十分な量のタンパク質が体内で作られず、機能を維持できない現象を「ハプロ不全」といいます。ハプロ不全が原因で起きている遺伝性疾患は複数あります。

正常なタンパク質の鋳型となるmRNAを標的とするSINEUPを核酸医薬として細胞に導入すれば、タンパク質の合成量が増加し機能を回復できると期待され、今後、ハプロ不全などが原因で引き起こされる疾患の治療への応用が望まれます。(遺伝性疾患プラス編集部)

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