ファブリー病の早期診断に有用で簡便な検査がないことが課題
大阪大学を中心とした研究グループは、ファブリー病患者さんの尿に含まれる「マルベリー小体」が、早期診断や治療効果判定に有用であることを明らかにしました。
ファブリー病は、遺伝性疾患「ライソゾーム病」に含まれる疾患です。細胞内には、体の中で不要になった物質を分解する小器官「ライソゾーム」があります。ファブリー病は、そのライソゾームに、グロボトリアオシルセラミド(Gb3)と呼ばれる脂質が蓄積することで、ライソゾームの機能障害が起こる病気。ライソゾームの機能障害は、心臓、脳血管、腎臓といった重要な臓器に障害を引き起こし、さまざまな症状の原因となります。
ファブリー病は、全身にさまざまな症状を生じるため、ファブリー病を疑われず見逃され病気が進行してしまうことがありました。現在、ファブリー病には、体内で作れなくなったタンパク質を補う治療が数種類存在します。さらに、これらの治療は早期から開始する方が高い効果を得られることもわかっています。しかしながら、これまでファブリー病の早期診断に有用で簡便な検査がないことが課題となっていました。
尿中マルベリー小体は、早期診断だけでなく治療効果判定にも有用
研究グループは今回、ファブリー病患者さんの尿中にごく少量含まれるマルベリー小体に着目。これまでマルベリー小体は、ファブリー病の診療においてどのような意義をもっているか不明でした。
尿のマルベリー小体を詳しく調べた結果、ファブリー病による腎障害が起こっている可能性を示す指標として、タンパク尿よりも早くマルベリー小体が尿に検出されることを発見しました。また、ファブリー病の治療を開始すると、尿のマルベリー小体が減少することも明らかになりました。
これらの結果から、尿中マルベリー小体がファブリー病の早期診断や治療効果判定に有用であることが示唆されました。「尿検査という日常の診療で行われている検査で患者さんの負担も少なく、迅速かつ簡便に希少疾患であるファブリー病をより早期に発見できる可能性が期待されます」と、研究グループは述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)