遺伝性血管炎「ADA2欠損症」発症の仕組みを解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ADA2欠損症で特徴的な幼少期の脳梗塞や脳出血、網状皮斑と呼ばれる皮疹などを確認
  2. 従来言われたI型インターフェロンではなくII型インターフェロンの活性化を確認
  3. 原因不明の発熱や脳梗塞などの診断確定ができれば早期治療の可能性があると指摘

日本の患者さん8人を対象に病態を詳しく解析

京都大学の研究グループが、遺伝性血管炎を引き起こす病気の一つである「ADA2欠損症」の患者さんの病気の特徴や炎症の症状が引き起こされる仕組みを解明しました。

ADA2欠損症は「ADA2」という遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性自己炎症疾患の一つです。感染症や自己免疫疾患がないにもかかわらず、血管などに炎症の症状が現れる病気のことを自己炎症疾患と言います。ADA2欠損症の特徴は、幼少期から始まる直径1mm以上の小型~中型の動脈に血管炎。炎症によって、発熱や発疹のほか、脳梗塞をはじめとした臓器の梗塞、脳出血や貧血などが起きます。

こうした病気の特徴はわかっているものの、患者さんの症状の詳細はまだ完全にわかっていないほか、炎症の起こる仕組みもわかっていませんでした。そこで研究グループは、8人のADA2欠損症の患者さんと4人の健常者を対象とした研究を行い、病気の特徴や発症する仕組みについて詳しく調べました。

早期治療の手がかりに

その結果、ADA2欠損症の患者さんの特徴として、血管炎によると考えられる小児の時期に発症した脳梗塞や脳出血が8人中5人で確認できました。このほか7人で網状皮斑と呼ばれる特徴的な発疹が確認されたほか、2人で骨髄不全による高度な貧血も確認されました。

さらに、全員が炎症を抑える薬剤である「抗TNT製剤」を使用することで炎症の症状を緩和できていることも確認されました。

一方で、研究グループは、患者さんの血液を用いて「メッセンジャーRNA」と「タンパク質」の発現解析も行いました。発現解析とは、遺伝情報を持つDNAの中で活発にタンパク質の生成に機能している場所を調べるものです。体の設計図になるDNAからは、メッセンジャーRNAが転写され、さらにメッセンジャーRNAの情報に従いタンパク質に翻訳されています。すべての部分が常に使われているのではなく、必要な部分が選択的に使われています。研究グループは血液に含まれるメッセンジャーRNAやタンパク質を調べることで、活発に発現する遺伝子が何かを分析しました。

こうした分析によって、従来ADA2欠損症において報告されたI型インターフェロン(IFN)のIFN-αやIFN-βよりも、むしろII型IFNのIFN-γが特徴的に活性化していると認められました。さらに、こうしたサイトカインの作用(サイトカインシグナル伝達)に重要なSTAT1の過剰活性化も認められました。

今回の結果から、研究グループは幼少期から原因不明の発熱のほか、脳梗塞や脳出血、網状皮斑などが認められる場合に、ADA2欠損症を疑うことができると説明しています。その上で、診断を確定できた場合には、早期に抗TNF製剤を使用することで炎症を抑えられる可能性があると指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)

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