表皮水疱症などで生じる「水ぶくれ」、治癒を促す細胞の働きを解明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 皮膚にできた水ぶくれの治癒を促すために毛の細胞が働くことを発見
  2. 毛を作る細胞が本来の成長を遅らせ、傷を治すために細胞を供給することを確認
  3. 表皮水疱症をはじめ皮膚に水ぶくれを作る皮膚の病気の治療に応用できる可能性

毛の細胞が自らの成長を犠牲にして治癒に関与

北海道大学の研究グループは表皮水疱症などで生じる皮膚の水ぶくれの治癒を促すために、毛を作っている細胞が働くことを発見したと発表しました。

皮膚の表面は「表皮」と「真皮」の2層に分かれ、表皮の最下層の「基底部」と呼ばれる場所では新しい細胞が常に作られています。ここから皮膚の細胞は上に押し上げられていき、最後は角質となりはがれ落ちています。水ぶくれは皮膚の表面の中でも一番表面に近い表皮が傷ついた状態となります。

組織が傷ついた場合、組織が成長している過程と同じように遺伝子が働いて、細胞増殖や傷の修復が起こることが知られています。それに対して、皮膚では常に新しい細胞が生まれているため、常に成長過程にあると考えられています。そのため傷ついたときに成長過程にどのような変化が起きて、さらに傷の修復がどのように起こるのかは通常の傷の修復とは異なる可能性があると見られていました。

そこで研究グループは、成長過程が続いている皮膚の水ぶくれにおいてどのように傷の治癒が起こるのかを検証しました。

毛の細胞が自らの成長を犠牲にして治癒に関与

こうして判明したのは、毛を作っている細胞が本来の毛を作るプロセスを遅らせて、いわば成長を犠牲にする形で傷の治癒のために働くよう変化していることでした。

表皮が失われて水ぶくれになった皮膚では、毛を作り出す細胞の大元となる「幹細胞」はいったん毛を作るのを遅らせて再生のために機能するようになります。具体的には、幹細胞は傷を再生するための細胞を供給するようになっていました。

研究グループはさらに病気の原因による違いも調べています。例えば、水ぶくれの生じる病気である表皮水疱症においては、表皮と真皮のつなぎの部分において「17型コラーゲン」というタンパク質が生まれつき欠けていることがわかっています(接合部表皮水疱症と呼ばれています)。このタイプの表皮水疱症では、皮膚から毛が失われており、このために水ぶくれの治癒ができなくなる可能性があるとわかりました。

さらに、生まれつき「7型コラーゲン」というタンパク質が欠けている場合(栄養障害型表皮水疱症と呼ばれます)は、毛の細胞が平たくなって移動できなくなる変化が確認されました。このために水ぶくれの治りが遅くなると見られました。

同じように水ぶくれが起こる皮膚の病気としては、表皮水疱症のほか、類天疱瘡や重症の薬剤アレルギーであるスティーブンス/ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などがあります。こうした病気でできる水ぶくれを治すために今回の研究結果を応用できる可能性もあると研究グループは指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)

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