小児ミトコンドリア心筋症、世界初の大規模調査でその遺伝的・臨床的特徴が明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ミトコンドリア心筋症の特徴を明らかにするため世界初の大規模調査を実施
  2. 「左室肥大」「新生児発症」「染色体構造異常」が、命に関わるリスク因子と判明
  3. 今後、診断のための正確な情報源として活用されることに期待

2004年〜2019年にミトコンドリア病と診断された223人を対象に調査

千葉県こども病院代謝科を中心とした研究グループは、小児ミトコンドリア心筋症の遺伝子変異や臨床的特徴、経過などについて、世界初となる大規模な調査を行い、論文報告したことを発表しました。

ミトコンドリア心筋症は、細胞のエネルギー工場に例えられる「ミトコンドリア」という細胞内小器官の構造や機能に関わる遺伝子の異常によって生じる心筋症です。ミトコンドリア心筋症は、ミトコンドリア病の中でも特に経過が深刻であると報告されてきましたが、その遺伝的基盤、頻度、経過などについて、これまで大規模な調査は行われていませんでした。

今回、研究グループは、2004年〜2019年にかけて原因遺伝子が特定されたミトコンドリア病の223人に対して、その遺伝的基盤、心筋症の詳細な病型などの臨床的特徴、長期的な経過を明らかにする研究を行いました。

ミトコンドリア心筋症はミトコンドリア病全体の約2割、心筋症の場合経過は深刻

その結果、ミトコンドリア心筋症は、ミトコンドリア病全体の22%である46人に合併していることがわかりました。その原因遺伝子は、25人が核遺伝子異常、14人がミトコンドリアDNA点変異、1人がミトコンドリアDNA大欠失、6人が染色体構造異常でした。心筋症の内訳は、約80%が肥大型心筋症で、その他、拡張型心筋症や左室緻密化障害も認められました。また、心筋症を認めないミトコンドリア病よりも、明らかにその後の経過が深刻であることが判明しました。

さらに、「左室肥大」「新生児での発症」「染色体構造に異常がある」の3つが、命に関わるリスク因子であり、特にこの3つ全てが当てはまると、極めて深刻であることがわかりました。

今回の研究成果は、これまで診断がつかないケースが多かったミトコンドリア心筋症を正確かつ迅速に診断する正確な情報源として、臨床現場において活用されることが期待されるものです。さらに研究グループは、ミトコンドリア心筋症の新たな病態解明と病因遺伝子に基づく治療薬開発、さらに心臓移植に関するエビデンス構築などにも貢献できることを期待するとしています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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