X染色体連鎖性低リン血症の成人患者さんに対し、ブロスマブが長期的に有効な可能性を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. X染色体連鎖性低リン血症(XLH)は骨、筋肉、関節に異常をきたす遺伝性疾患
  2. 成人XLH患者さんは痛み、体のこわばり、疲労、身体機能・歩行機能の不調を経験
  3. ブロスマブ治療96週時点でこれらの症状の改善を確認

体内のリンが尿中に過剰に排泄される遺伝性疾患、QOLに影響

協和キリン株式会社は9月24日、希少な遺伝性代謝性骨疾患であるX染色体連鎖性低リン血症(XLH)の成人患者さんに対し、クリースビータ(R)(一般名:ブロスマブ)が持続的に有効であることを示す新たなデータを論文報告したと発表しました。

X染色体連鎖性低リン酸血症(XLH)は、遺伝的な原因によって繊維芽細胞増殖因子23(FGF23)という物質が血液中に過剰となることで、体内のリンが尿中に過剰に排泄され、また腸からの吸収も悪くなり、血液中のリン濃度が慢性的に低くなる希少な遺伝性疾患です。リンは体のエネルギーレベル、筋肉の機能、健康な骨や歯の形成に必要となる重要なミネラルであるため、XLHでは骨、筋肉、関節に異常をきたします。命を脅かす疾患ではないものの、その負担は生涯にわたって継続し、進行性の疾患でもあるためQOL(生活の質)を低下させる可能性があります。

XLHの遺伝子異常を直接的に治療する根本的治療法はまだ確立されていません。一方で、過剰なFGF23の作用を抑制することで血液中のリン濃度を正常なレベルに回復・維持できる治療法が確立されれば、この疾患の症状の進展の阻止が期待されます。また、XLHは遺伝性くる病・骨軟化症の中でも最も一般的な病気で、家族歴のない人でも発症することがありますが、通常は遺伝子異常を持つ親から引き継がれます。

ブロスマブは、FGF23に結合して患者さんの血液中に過剰に存在するFGF23の働きを抑える薬です。これにより、血液中のリン濃度が回復し、種々の症状が改善されると期待されます。この薬は2018年に欧州で承認されたのを皮切りに、XLH等の治療薬として世界各国で承認が続いています。日本では、2019年にFGF23関連低リン血性くる病・骨軟化症の治療薬として承認されています。また2020年12月には、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療のための在宅自己注射が保険適用になりました。

成人患者さんの痛みや身体機能の不調など、ブロスマブ治療96週時点で改善を確認

今回発表された論文では、まず、成人のXLH患者さんが痛み、体のこわばり、疲労、身体機能および歩行機能の不調を経験することが示されました。そして、ブロスマブによる治療の結果、96週後には治療開始時点と比べて、これらの不調が有意に改善することが示唆されました。また、血液中のリン濃度は、治療24週後には、プラセボ(偽薬)であった人人に比べて有意に上昇していることが確認されました。なお、24週間後には、すべての患者さんがブロスマブによる治療に切り替えられ、96週までの間、治療経過に関するデータが収集・分析されました。

今回の報告論文の筆頭著者である、フランス・パリのコシャン病院のDr. Karine Briotは、「本研究では成人のXLH患者さんが痛み、こわばり、疲労、歩行困難など、多くの身体的課題に直面することが再認識されました。これまでにもブロスマブは、プラセボと比較して成人XLH患者さんのリン濃度を改善することが示されていましたが、今回の新たな結果は、成人XLH患者さんが長期的な合併症や身体的障害を有していても、ブロスマブで治療することによって、その身体機能や生活の質をも長期的に改善できることを示唆しています」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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