体が動かなくても感覚は残る不思議
九州大学の研究グループは、筋萎縮性側索硬化症の病気を発症したり、症状が進行したりするメカニズムの一つとして体の末端に近いところに存在している神経細胞(末梢神経)に異常なタンパク質が蓄積してしまう問題が関係していることを確認しました。さらに、血液の中にある免疫細胞の一種「マクロファージ」がこうした異常なタンパク質を除去する役割を果たしていることを発見しました。
筋萎縮性側索硬化症は国指定の難病でこれまでに原因が解明されておらず、病気を根本的に治癒するための治療法も存在していません。多くの場合は60~70代で発症して、体を動かす運動神経の細胞が徐々に死んでいき、発症から2~3年で多くの人が、人工呼吸器がないと呼吸ができなくなります。
筋萎縮性側索硬化症の不思議なところは、体を動かすことはできないものの、体の感覚は保たれることでそのメカニズムがよくわかっていませんでした。
研究グループは筋萎縮性側索硬化症においては症状が始まる前の段階から、体の末端に近い末梢神経に異常なタンパク質が多く蓄積している現象がみられることに着目しました。この異常なタンパク質がある場所ではマクロファージと呼ばれる老廃物を取り除く役割を持つ細胞が多くみられます。研究グループでは、動物実験によってマクロファージが正しく機能する場合としない場合で筋萎縮性側索硬化症の症状がどのように変化するのかを確かめました。
マクロファージにより発症を予防できる可能性も
こうして判明したのが、マクロファージが機能しない場合に寿命が短くなるという変化です。その上で、研究グループはマクロファージを詳しく調べたところ、マクロファージが異常なタンパク質を飲み込んで除去して、体に赤みや腫れ、痛みなどを引き起こす炎症反応を抑える役割を持つことを確認しました。
こうした発見から今後マクロファージを増やしたり、活発に機能させることで、筋萎縮性側索硬化症の発症を予防したり、症状の進行を遅らせる可能性があると研究グループは推定しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)