新生児期に発症したミトコンドリア病はより深刻なため、診療するうえでの正確な情報源が必要
千葉県こども病院を中心とした研究グループは、新生児期に発症したミトコンドリア病281人の大規模なデータをとりまとめ、その臨床的特徴、遺伝子診断、その後の経過を明らかにしたと発表しました。
ミトコンドリア病は、約5,000人に1人の頻度で発症する、エネルギー産生異常を来す先天代謝異常症です。新生児期(生後28日以内)に発症した人は乳幼児期や成人期に発症した症例と比べ、多くが高乳酸血症を伴うなど、極めて深刻な経過をたどりますが、原因遺伝子やその病態はこれまで未解明のままでした。そこで今回、研究グループは、ミトコンドリア病を診療するうえで、より新しく正確な情報源を作ることを目的に、今回の研究を行いました。
研究の対象となったのは、2004年から2020年までに日本で出生した新生児期発症のミトコンドリア病281人。それぞれ、多系統のミトコンドリア病(全身の臓器に影響がおよぶもの)、心筋症、リー症候群、肝症の4つの病型に分けられ、その臨床的特徴、遺伝子診断、その後の経過に関して検討が行われました。
多系統のミトコンドリア病が大部分、遺伝的病因は多様だった
その結果、病型は多系統のミトコンドリア病が194人(69%)と大部分を占め、心筋症が38人、リー症候群が26人、肝症が23人でした。遺伝子診断が確定した84人のうち、69人(82%)が核遺伝子の異常によるもので、15人(18%)がミトコンドリア遺伝子の異常によるものでした。また、病因となった核遺伝子は36種類と多様でした。
発症は生後2日以内が74%を占め、初発症状は生後2日以内に新生児仮死や呼吸障害、生後3日以降は体重増加不良が多いことが判明しました。高乳酸血症は86%に認められました。また、おなかの中にいた期間相当の体格より小さく生まれた子ども(在胎不当過小児)が35%と、胎児期から兆候が認められる場合もあり、早産児は35%でした。全体の生存期間の中央値は1.9年で、1年後の生存率は52%でした。
今回の報告は、新生児期発症のミトコンドリア病症例の臨床的特徴、遺伝子診断、予後をまとめた国内では初めての報告となりました。世界的にもこれほど大規模に新生児発症のミトコンドリア病をまとめた報告はありません。
今回わかった情報は、新生児期発症のミトコンドリア病を診療する現場で、正確な情報源として活用されることが期待されるものです。さらに、新生児期発症の多い重篤なミトコンドリア病の新たな病態解明と病因遺伝子に基づく治療開発など、ミトコンドリア病研究の一層の発展につながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)