ダウン症候群ではアミロイドβ分泌が増える
京都大学iPS細胞研究所を中心とした研究グループは、ダウン症候群の患者さんから作ったiPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経細胞を作り、その神経細胞のアミロイドβの分泌が健常者よりも増えることを確認。その上で、抗酸化剤によりアミロイドβ分泌を抑制できたと発表しました。
アミロイドβは体内の老廃物の一つとして知られるタンパク質で、認知症において脳での蓄積が見られるほか、心臓などの機能低下などとも関係しています。
ダウン症候群は21番目の染色体が通常は2本であるところが3本存在している遺伝性疾患でトリソミー21とも呼ばれています。特徴的な顔立ちが見られ、心臓や骨格、免疫の異常などが起きるほか、知的障害が多くの場合に起こり、60%の人が若年性アルツハイマー病を発症すると知られています。
ダウン症候群の若年性アルツハイマー病においては、その原因の一つとしてアミロイドβが脳に蓄積することがあると考えられています。というのもアミロイドβを作り出すAPP遺伝子がダウン症候群で3本になる21番目の染色体にあり過剰になりやすいと考えられています。APP遺伝子から作られるAPPタンパク質は脳内で切れてアミロイドβになります。
ダウン症候群の患者さんの脳内にはアミロイドβが見られて、アルツハイマー病の患者さんの脳と似た特徴があるとわかっています。さらに酸化ストレスにより神経障害が起こるとも考えられています。
研究グループはダウン症候群の患者さんからiPS細胞を作り神経細胞に変えた上で、健常者との違いを調べました。さらに、酸化ストレスを抑える目的で抗酸化剤のN-アセチルシステインを投与して変化を調べました。
N-アセチルシステインでアミロイドβの分泌が減少
こうしてわかったのは、ダウン症候群の患者さんから作り出したiPS細胞は健常者よりもアミロイドβを多く分泌していることです。その上でN-アセチルシステインを投与することでアミロイドβの分泌量が減少することがわかりました。
こうした観察結果から、研究グループは今回の発見がダウン症候群の治療選択や研究に役立つと指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部 協力:ステラ・メディックス)