小児がんの新生児遺伝子スクリーニング検査を行うことで、小児がん死が半減する可能性

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 米国で、小児がん遺伝子のスクリーニング検査を行った場合のシミュレーションを実施
  2. 新生児ときょうだいのスクリーニングで、小児がんによる死亡が減らせると推定
  3. このスクリーニング検査は費用対効果が高いという結果も

新生児とそのきょうだいに小児がん遺伝子スクリーニングを行った場合の効果は?

米国国立衛生研究所は10月19日、新生児のうちに遺伝子検査を行って、がん遺伝子に変異を持っているとわかった場合、さらにそのきょうだいに対して遺伝子検査を行うことにより、小児の希少がんによる死亡数を半減させることができる可能性があるという研究の結果を発表しました。この研究は、米ボストン・チルドレンズ病院を中心とした研究グループによるものです。

新生児を対象とした遺伝子スクリーニングを行うことで、小児がんによる死亡を減らせる可能性があると考えられています。今回、研究グループは、この検査を行う場合の利点や費用対効果について、研究を行いました。

今回、研究グループは、2020年に作成されたPreEMPT(Precision Medicine Policy and Treatment)モデルというシミュレーションモデルを用いて、新生児の時点で、小児がんに関連する11の遺伝子(RET、RB1、TP53、DICER1、SUFU、PTCH1、SMARCB1、WT1、APC、ALK、PHOX2B)のいずれかに変異(病原性、あるいは病原性の可能性がある変異)が見つかった場合の、そのきょうだいの転帰を推定しました。シミュレーションは、11の遺伝子それぞれの変異に関連する小児がんの、現在の発生率に基づいて行われました。

20歳前に小児がんで29人亡くなると推定されていたのが14人に減る計算

その結果、米国の新生児、推定370万人のうち、1,584人がこれらの遺伝子のいずれかに変異を有し、そのきょうだいのうち792人が同様の変異を有し、そのうち116人が20歳までにがんを発症すると推定されました。

これらの変異を有するきょうだいが出生時に診断され、その後、定期的なスクリーニング検査を受けた場合、20歳前に29人死亡すると推定されていたうち、15人(52%)は亡くならずに済むと考えられるそうです。また、この定期的なスクリーニング検査を受けた場合は受けなかった場合に比べ、きょうだい間での人生の各年について、年間約1万7,000ドルの医療費削減につながるという結果が得られました。

研究グループによると、これは、成人のがん患者さんで原因遺伝子の変異がわかり、その親族に対して遺伝子検査を行った場合に得られると推定された利益に匹敵する利益だということです。(遺伝性疾患プラス編集部)

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