免疫系が機能不全になり、感染症を繰り返す遺伝性疾患
理化学研究所を中心とした国際共同研究グループは原発性免疫不全症(PID)という難病の新しい原因遺伝子変異を発見したことを発表しました。
PIDは先天的な遺伝子変異を原因として発症する遺伝性疾患です。免疫細胞が正常に作られなかったり機能しなかったりして、免疫系が機能不全になり感染症を繰り返します。原因となる遺伝子変異は複数存在しており、その遺伝子変異の種類によって病気の現れ方も異なります。
研究グループは次世代シーケンサーと呼ばれる新しい遺伝子解析の技術を用いて、タンパク質をコードしている遺伝子全体を解読する全エクソーム解析による原因遺伝子変異の探索を進めています。
これまでに理化学研究所の研究グループは、免疫細胞の一つであるB細胞で機能しているAIOLOS遺伝子とPIDとの関係を見いだしていました。2021年には、家系にPIDの発症が確認される患者さんの原因遺伝子変異がAIOLOS遺伝子変異であることを発表しました。AIOLOS遺伝子がコードしているタンパク質の中の159番目のアミノ酸であるグリシンがアルギニンに変化する変異です。このほか海外でもAIOLOS遺伝子の別の遺伝子変異がPIDの原因であることが報告されていました。
動物実験でPIDの異常を再現
今回、国際共同研究グループは、血液中の抗体や免疫細胞であるB細胞やT細胞が減少し、肺炎を繰り返すPIDの患者さんが認められる家系から、その原因となる遺伝子変異の解析を進めました。患者さんや親族の遺伝子解析を実施し、これまでに報告されていたものとは別のAIOLOS遺伝子の変異がPIDに関連する可能性があると突き止めました。それは160番目のアミノ酸がアスパラギンからセリンに変化する変異です。
病気との関連を確かめるため、研究グループは動物実験によってこの遺伝子変異がPIDの原因になるかを調べました。その結果、患者さんと同様にT細胞やB細胞が正常に作られないことなどを確認。AIOLOS遺伝子でこのたび新たに確認された遺伝子変異がPIDの原因であると証明しました。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)