脊髄性筋萎縮症の経口治療薬「エブリスディ」、治療3年目の有効性維持と安全性を確認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. SMA治療薬「エブリスディ」に対する2つの臨床試験の新たなデータが発表された
  2. SUNFISH試験では、2~25歳の患者さんで治療3年目の有効性と安全性を確認
  3. 治療2年時点で未治療の場合との比較も行われた

「SMN2スプライシング修飾剤」という種類の経口SMA治療薬

中外製薬株式会社は、同社と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社による、エブリスディ(R)(一般名:リスジプラム)の脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する新たなデータについて発表しました。今回発表されたのは、「SUNFISH試験」と「RAINBOWFISH試験」における新たなデータです。

SMAは乳幼児では最も頻度の高い遺伝性の神経筋疾患で、脊髄の運動神経細胞の変性によって筋萎縮や筋力低下を示します。SMAの原因遺伝子はSMNタンパク質の設計図となるSMN1遺伝子とSMN2遺伝子です。SMAは、SMN1遺伝子が正常に働かないことに加え、SMN2遺伝子のみでは十分量のSMNタンパク質が作られないために発症します。

エブリスディは、「SMN2スプライシング修飾剤」という種類の経口SMA治療薬。運動神経と運動機能の維持に重要なSMNタンパク質の量を増加させ、維持することでSMAを治療するよう設計されています。

幅広い患者さんで、エブリスディの長期的な有効性および安全性が示された

SUNFISH試験は、II型およびIII型SMAの小児および若年成人患者さん(2~25歳)を対象としたプラセボ対照二重盲検第II/III相国際共同治験。第II相パート(51名)では、第III相パートにおける至適用量の検討が行われました。第III相パート(180名)では、薬の使用を開始してから12か月時点のMFM-32(Motor Function Measure 32)の合計スコアによる運動機能評価が行われました。

今回、SUNFISH試験の新たな3年時点の成績では、2~25歳のII型またはIII型SMAの患者さんに幅広く、エブリスディの長期的な有効性および安全性が示されました。具体的には、エブリスディを開始して1年目に認められたMFM-32(Motor Function Measure 32)で評価した運動機能の改善が3年目まで維持されました。また、1年目に増加したRULM(Revised Upper Limb Module)およびHFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale-Expanded)で評価した運動機能スコアは、3年目でも維持されました。

安全性については、3年間にわたりエブリスディの良好な忍容性が示されました。SUNFISH試験における有害事象の発現は3年間を通じ経時的に減少し、重篤な有害事象の発現は3年目に低い傾向が認められました。全体として、有害事象および重篤な有害事象は基礎疾患を反映したものであり、治験中止に至った治験薬と関連のある有害事象は認められませんでした。

未治療と比較して著名な改善・維持の割合が高いと判明

また、SUNFISH試験のパート2の探索的な2年時点の有効性の成績では、未治療の外部対照群と比較してエブリスディによる運動機能の改善または維持が示されました。具体的には、MFM合計スコアの探索的な加重解析の結果、SUNFISH試験のパート2では、24か月間エブリスディでの治療を受けていた患者さんは、未治療の外部対照群と比較して、著明な改善(変化量≧3ポイント)または維持(変化量≧0ポイント)を示す割合が高く認められました(それぞれp=0.025およびp=0.002)。

RAINBOWFISH試験は、遺伝学的検査でSMAと診断されており未発症の生後6週間未満の乳児(25名)を対象にリスジプラムの有効性、安全性、薬物動態、薬力学を検討する多施設共同非盲検試験。今回、同試験の新たな中間データも発表されました。

なお、エブリスディの国内開発は中外製薬が実施しており、日本からはSUNFISH試験に参加しています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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