脊髄性筋萎縮症の治療薬スピンラザ、遺伝子変異あり未発症の患者さんへの効能追加承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. スピンラザ(ヌシネルセン)は髄腔内注射でSMAを治療する核酸医薬品
  2. ヌシネルセンでSMAを治療するには臨床症状が現れるまで待つ必要があった
  3. 海外の臨床試験で発症前から治療した場合の効果が示されており、日本でも効能追加承認された

現在のSMAの国内診断基準では、臨床症状から確定診断され治療開始となる

バイオジェン・ジャパン株式会社は3月28日、「スピンラザ(R)髄注12mg」(一般名:ヌシネルセンナトリウム)について、「臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測される脊髄性筋萎縮症(SMA)」への効能追加承認を同日取得したことを発表しました。

SMAは、SMN1遺伝子の欠損または正常な機能が失われる変異等によって、同遺伝子から作られるSMNタンパク質が欠乏する、常染色体劣性(潜性)遺伝疾患です。SMNタンパク質の欠乏により、運動ニューロンに変性が生じ、手足や体幹の筋肉に萎縮を生じます。

ヌシネルセンは、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」と呼ばれる核酸医薬の1種で、体内で作られる機能的なSMNタンパク質の量を増やすようにデザインされた薬です。

日本における現在のSMAの診断基準では、臨床症状から確定診断がなされるため、遺伝子検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有している場合であっても、ヌシネルセンで治療を開始するためには臨床症状が現れるまで待つ必要がありました。

NURTURE試験では評価時全員生存、気管切開術/永続的換気はなし

今回の承認は、「NURTURE試験」(臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測されるSMA患者を対象にした海外第2相試験)に基づいています。同試験では、遺伝子検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し、臨床所見は発現していない3~42日齢の外国人脊髄性筋萎縮症患者さん25人を対象に、用法・用量に従い、12mg相当量の本剤を初回注射(髄腔内注射)後、15、29、および64日目に注射し、以後4か月後に1回注射する非盲検非対照試験が実施されました。

中間解析において、治験薬の最終注射または有効性評価の最終来院時点までの試験参加期間は中央値45.11か月(範囲:33.3~56.8か月)でした。主要評価項目であるイベント(死亡または呼吸介入)が発現するまでの期間については、25人全員が生存し、4人は呼吸介入が必要になったものの、気管切開術または永続的換気を必要とした人は認められませんでした。また、25人のうち11人(44.0%)に副作用が認められ、主な副作用は筋力低下(12.0%)でした。

同剤は、日本では、オーファンドラッグ指定のもと、乳児型SMAの適応症は2017年7月3日に、乳児型以外のSMAの適応症は2017年9月22日に承認されています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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