I型脊髄性筋萎縮症の乳児に対するリスジプラム治療、3年間で生存や運動機能を長期改善

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 症候性I型脊髄性筋萎縮症の乳児に対するリスジプラム治療で3年後に推定91%が生存
  2. リスジプラム治療で、嚥下能力、支えなしでの座位の保持など運動機能改善を確認
  3. 肺炎や呼吸不全などの有害事象は治療開始1年目と比べて3年目には78%減少

リスジプラムの治療を3年間受けての有効性と安全性を確認

スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社は症候性I型脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の乳児に対して、リスジプラム(商品名:エブリスディ)を3年間にわたって使用した場合の長期生存や有効性などを確認した臨床試験の結果を報告しました。結果として、リスジプラムによる治療を受けた乳児の91%が3年後も生存していたほか、「飲み込むことができるか」「支えなしで座っていられるか」などの評価から運動機能も改善しているとわかりました。

SMAは遺伝性の神経筋疾患で、脊髄の運動神経が変性し、筋萎縮や筋力の低下が起こる病気です。乳幼児では最も頻度が高く、乳児期から小児期までに10万人当たり1~2人の割合で発症する命にも関わる病気です。SMN(survival motor neuron)と呼ばれる遺伝子の異常により正常なSMNタンパク質が十分な量できないために病気になります。

リスジプラムは、正常なSMNタンパク質を増やす効果がある薬で、SMAを治療するために日本では2021年6月から使用されています。

ロシュ社ではI型SMAの乳児を対象にリスジプラムの有効性や安全性を評価する試験を進めています。今回、3年間リスジプラムで治療をした場合に生存や運動機能にどのような効果が現れるかを報告しました。

支えなしでは座っていられなかったのが、出来るようになった乳児も

今回、リスジプラムでの治療を続けた乳児は36か月後に推定91%が生存していたということが確認されました。その上でリスジプラムでの治療を受けた48人のうち32人が24か月以降に支えなしで座位を5秒保つ能力を維持し、4人が新たにその能力を獲得できました。さらに、30秒間座位を保つ能力を維持できた乳児が20人、新たにその能力を獲得した乳児が15人確認されました。支えなしで座位を保てるようになった乳児は、3年間のリスジプラム治療後も能力を失うことはありませんでした。リスジプラムでの治療を受けたほとんどの乳児は36か月目まで経口摂取と嚥下(飲み込み)の能力を維持できていました。

主な有害事象は発熱や上気道感染、肺炎などで、重篤な有害事象は、肺炎、呼吸窮迫、ウイルス性肺炎、急性吸器不全および呼吸不全でした。有害事象は治療期間が長くなるほど減り、治療開始1年目から3年目の間に78%減少しました。ロシュ社によると、有害事象や重篤な有害事象はもともと存在している病気に関連しており、休薬や治療中止に至った薬剤関連の有害事象はなかったと説明しています。入院頻度は治療開始12か月間で患者1人当たり年間1.24回でしたが、36か月間で年間0.70回まで減りました。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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