遺伝性血管性浮腫、診断までの道のりの実態調査で「さまざまな症状に悩む日々」が浮き彫りに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 平均23年の長期にわたる未診断期を経験した遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さん9人の当時の受診状況や困難を調査
  2. 未診断期には患者さんの多くが症状に苦しみながら、難病や希少疾患の可能性を疑わなかった実態を確認
  3. 患者さんや医療者が難病や希少疾患の可能性に気づきやすくする対策が必要と指摘

HAE患者さんにインタビューして未診断期間の実態を調査

大阪大学の研究グループは、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さんに症状が現れて診断が付けられるまでの未診断期間の経験を詳しく調べるインタビュー調査を実施しました。多くの患者さんは、症状が治らずに長期間苦しむ一方、患者さん本人も医療者も難病や希少疾患にかかっていると疑うことがほとんどなく、次第に慣れや諦めを持つ患者さんが多いことが明らかになりました。結果として長期にわたって診断が付かなかった可能性があります。

HAEは、遺伝子の変異が原因となり血液の中にあるC1-エラスターゼ・インヒビター(C1-インヒビター)の機能が低下する病気です。この病気になると体の至るところに2~3日続くはれやむくみ(血管性浮腫)が現れます。喉が腫れる場合には呼吸困難につながるため、命に関わることもありますが、診断が付いていれば発作時の治療が可能です。

また、この病気は原発性免疫不全症候群という国の指定難病の一つに含まれ、先天性補体欠損症に分類されます。欧米の研究によると、難病や希少疾患は診断が付くまでに平均4~9年かかると報告されています。診断が付かない期間は、患者さんが複数の医療機関で不必要な検査を受けたり、誤った診断を受けたりすることも珍しくありません。

今回、研究グループは、HAE患者さんの症状が現れてから診断が付くまでの経験に着目しました。従来、未診断期間や受診した医療機関の数などの数量的なデータを調べた研究はありましたが、患者さんの経験を記述的に分析した研究はあまりありません。

そこで研究グループは症状が出てから診断が付くまでに5年以上を要した患者さん9人を対象として1人当たり1時間半程度のインタビューを実施。患者さんが実際に医療機関をどのように受診し、自分の体の不調をどう理解していったのかなどを聴取しました。

未診断期の患者さんが直面する困難には3つのテーマ

こうしてわかったのは、患者さんが未診断の間に症状に苦しみ、困難に直面したことです。対象となった患者さんの未診断期間は平均23年でした。

研究グループは患者さんが直面した困難の経験は大きく3つのテーマに分けられると説明しています。一つは、症状への慣れと諦めです。例えば、患者さんの経験する症状としては手足の腫れや腹痛などの症状があります。これらの症状のために患者さんは複数の医療機関を受診することもありますが、明確な診断や説明が付くことがなかなかありません。様子を見ましょうと言われることが繰り返される、精神的な要因での説明を受ける、別の診断名に基づく治療で症状が悪化するなど、そのような経験を何度も繰り返しているうち、結果として体質と諦めたり、大した問題ではないと考えたりすることで、次第に医療機関を受診しなくなるとわかりました。体調や病院での対応に慣れ、諦めに至ったのです。

二つ目は、積極的な原因探求です。少数の患者さんの中には自分自身の症状を異常と感じ、積極的に医療機関を変えながら原因を探る行動を続けた人もいました。医療関係者が協力してくれる場合も、適切な情報にたどり着くのは容易ではなく、長期に渡って幾度も検査や受診を繰り返すことになりました。

三つ目は、病院外での独自の試みです。患者さんの中には、病院以外の場で、医療に頼らずに症状改善につながる取り組みをしていることが確認できました。その取り組みには違いはありますが、例えば、症状の原因を明らかにするために生活や食事を記録するといった取り組みや、貧血や無月経になるほどの食事制限をしているケースもありました。

全体としては、未診断期間の間に診断を探ろうとしている人は少なく、多くの患者は難病や希少疾患を疑わずに、体調や病院での対応に慣れてしまうケースが多くなっていました。患者さんの多くは症状を抱えながら、困難の中で生活しているという実態がありました。

研究グループはこうした調査を通して、患者さんや医療者が難病や希少疾患の可能性に気づきやすくする施策が必要であると指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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