「全国どこでも・誰でも参加可能に」未診断疾患イニシアチブ(IRUD)6年間の成果報告

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 未診断疾患イニシアチブ(IRUD)が2015年の発足からの6年間の活動と成果を報告
  2. 全国450の医療機関の連携により、全国のどこでも未診断疾患を診断できる体制を作った
  3. 6年間で5,136家系の解析を完了し、4割を超える2,247家系の診断を確定した

診断できなかった疾患の原因を突き止めるプロジェクト

国立精神・神経医療研究センターの研究グループは、診断のつかない病気(未診断疾患)の解決を目的として2015年に始まった未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases:IRUD)プロジェクトの成果を報告しました。これまでにどんな施設でも、また、どんな検査をしても診断がつかなかった2,247家系の患者さんの診断を確定できたと説明しています。

遺伝性疾患のデータベースであるOMIMによると、これまでに登録されている9,000余りの遺伝性疾患のうち3分の1は原因がわかっていません。研究グループは、たとえ原因がわかっている病気であっても、そもそも病気がまれであったり、症状が複雑であったりするために、多くの検査をしても診断すらついていない場合も多く存在していると伝えています。日本医療研究開発機構(AMED)が2015年と2016年に行った調査では、全国で診断のついていない患者さんが3万7,000人以上いると判明しました。

IRUDは、2015年にAMEDの主要なプロジェクトとして発足した、医療機関の連携によって未診断疾患の解決を目指すプロジェクトです。IRUDが掲げた目標は次の通りです。

  1. 全国どこにいても・誰であってもIRUDに参加できる体制を作る
  2. 網羅的ゲノム解析に代表される革新的な技術を活用して診断を確定する
  3. 国内外でデータを共有(データシェアリング)して利活用することにより、未診断疾患の解明・克服をめざす

研究グループはIRUDが始まってから6年間の活動と成果を報告し、掲げたこれらの目標を大きく達成したと説明しました。

高い診断率で2,000以上の診断を確定、遺伝性疾患の新たな原因遺伝子も発見

IRUDの診断連携に参加した医療機関は全国で450に上りました。2021年3月までに全国37の拠点病院、15の高度協力病院、398の協力病院が参加しています。この中で国立精神・神経医療研究センターは全国を統括するコーディネーティングセンターを担当してきました。

研究グループによると、6年間のIRUDの活動によって6,301家系の1万8,136人がIRUDに参加し、このうち5,136家系の解析が完了したと説明しています。結果として2,247家系の診断が確定しました。診断率は43.8%で、研究グループによると、これは海外の同様なプロジェクトを超える高い診断率となりました。

また、657遺伝子において1,718種類の変異を同定し、このうち6割を超える1,113種類が従来知られていなかった新しい変異とわかりました。さらに、遺伝性疾患との関連が知られていなかった24の遺伝子を原因遺伝子と特定したほか、4つの遺伝性疾患を発見するなど、新しい病気の概念を見つけ出すような成果も実現しました。またIRUDの取り組みの中で専門医や認定遺伝カウンセラー(R)を増やすことにもつながったと説明しています。

研究グループでは、まれで診断が難しい病気の遺伝的な原因を明らかにしたことで、今後の遺伝子に注目した医療の発展につなげられると説明しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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