横隔膜の筋肉の異常により呼吸不全になる病気
京都大学の研究グループは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルマウスの横隔膜に対して、ヒトのiPS細胞から作った骨格筋幹細胞を移植することに成功したと発表しました。今回の研究結果は、この病気において呼吸機能改善の治療につながる可能性があります。
DMDは、筋肉にあるジストロフィンと呼ばれるタンパク質が欠損することで発症する進行性の筋肉の病気です。進行すると、呼吸に重要な役割をもつ横隔膜の筋肉の機能が低下することで呼吸困難につながり、命に関わることもありますが、この病気にはまだ根本的な治療法がありません。
異常のある横隔膜の筋肉を再生させるため、有望と考えられているのが細胞移植です。研究グループはこれまでにiPS細胞から骨格筋幹細胞を作り出すことに成功していました。しかし、これまでにマウスの横隔膜への細胞移植に成功した例はありませんでした。そこで今回は骨格筋幹細胞を横隔膜に移植して定着させることができるかを検証しました。
ポリマーを混ぜることで移植効率を高める
今回の研究を通して、横隔膜にiPS細胞から作った骨格筋幹細胞を移植できることが確認できました。
研究グループは横隔膜に対する細胞の定着の効率を高めるため、ヒアルロン酸とゼラチンを混合したポリマーを加えた条件で移植を行いました。iPS細胞由来の骨格筋幹細胞は移植効率がかなり低く、ポリマーなしの条件では定着しない場合も多くありましたが、この方法で移植効率の向上につながることが確認できました。研究グループは今回の方法をさらに改良し、より効率の良い細胞移植の手法の確立を目指すということです。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)