遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作を抑える「自己注射可能」な治療薬、国内で承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制を効能・効果として、「ベリナート皮下注用2000」が製造販売承認された
  2. 海外の臨床試験で、発作抑制頻度を1か月あたり0.52回に抑制
  3. 国内の臨床試験でも日本人HAE患者さんに対して有効性および安全性を検証

HAEの繰り返し腫れる発作を自己投与で抑制可能な皮下注製剤

CSLベーリング株式会社は2022年9月26日、遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作の発症抑制を効能・効果として、「ベリナート皮下注用2000」の製造販売承認を厚生労働省より取得したことを報告しました。

HAEは、遺伝子の変異により血液中のC1インアクチベーター(別名:C1インヒビター)と呼ばれる酵素の量の低下や機能の異常により引き起こされる病気で、皮膚、おなか(腸)、手足、唇、のど(気道)など全身のいろいろな部分に繰り返し腫れる発作が引き起こされる遺伝性疾患です。特に、のどの腫れは気道がふさがることで命に関わることもあります。

ベリナート皮下注用2000は、週に2回投与する皮下注製剤で、自宅で自己投与することが可能です。世界では2017年に販売開始以来、米国、欧州、オーストラリアなど、30以上の国や地域で販売されています。

3つの臨床試験で有効性と安全性を検証

今回の承認は、海外の臨床試験であるCOMPACT試験とCOMPACT長期投与試験、そして国内の臨床試験において、有効性と安全性が評価されたことによるものです。

COMPACT試験において、HAEの発作頻度はベリナート投与群(60 IU/kg)で0.52回/月、プラセボ群4.03回/月となり、ベリナート投与の有効性が示されました。また、国内の臨床試験で日本人HAE患者さんに対してもベリナートの有効性および安全性が検証されました。

同社の代表取締役社長ジャン・マルクモランジュ氏は、「ベリナート皮下注用2000は、HAE患者さんで不足した血中C1インアクチベーターを補充し、安定的に維持することを可能にした製剤です。この度、自宅で自己投与していただけるヒトC1インアクチベーター製剤ベリナート皮下注用2000が承認されたことは、HAE患者さんにとって有力な新たな治療選択肢となることを確信しています。HAE領域において40年以上の実績を持つパイオニアとして、私たちCSLベーリングは、ベリナート皮下注用2000の提供によって患者さんの生活に変化をもたらすこと、そして日本におけるHAE患者さんの診断と適切な長期の発症抑制治療を大きく前進させることにコミットしています」と、述べています。

また、同社は、2022年6月にHAEの患者さんとご家族への情報提供の充実を図り、疾患啓発サイト「HAE情報センター」をリニューアル。このリニューアルは、疾患に関する正しい情報をよりわかりやすく伝え、患者さんやご家族の心配や不安を解消するとともに、患者さんのQOLの向上に寄与することを目的としたと伝えています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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