過剰な炎症や粘液の発生によって気道が塞がれる
熊本大学の研究グループは、遺伝性肺疾患の一つである嚢胞性線維症(CF)の病状悪化につながる、ウイルス感染などを引き金とした過剰な炎症継続のメカニズムを解明したことを発表しました。
CFはCFTR遺伝子の変異により発症する遺伝性疾患です。その遺伝子に基づいて作られるCFTRタンパク質は、全身の皮膚、気道や腸などの表面を覆う上皮細胞に存在し、細胞内外のイオンや水の輸送を調節しています。遺伝子の変異により、CFTRタンパク質が失われたり、正常に機能しなくなったりすることで、気道では慢性的な炎症が起きたり、粘液が過剰に貯まりやすくなったりします。それらの症状から、気道が塞がり呼吸困難によって命の危険につながることもあります。
そして、CFではウイルス感染によって過剰な炎症が引き起こされることで、これらの症状が悪化することが問題となっていました。しかし、このウイルス感染時の炎症応答について、詳細なメカニズムはよくわかっていませんでした。今回、研究グループは、細胞の膜に存在し、炎症を抑える役割を担うタンパク質SIGIRRに着目しました。
炎症を抑える機能を果たすSIGIRRの合成に異常を確認
その結果、CF患者さん由来の肺細胞では、SIGIRRが正常に合成されなくなる問題が起きていることが明らかになりました。CFでは異常なSIGIRRが作られることにより、炎症を抑える機能を果たすタンパク質が不足し、結果として過剰な炎症が起こることが示唆されました。
異常なタンパク質が作られる原因として、遺伝情報に基づいてSIGIRRタンパク質が合成される際に必要な「mRNAスプライシング」という過程が正常に行われていないためであることも明らかになりました。
研究グループは、「今回の発見はCFの症状が起こる仕組みを根本的に理解することにつながる研究成果」と説明しています。異常なmRNAスプライシングを修正する手段が見つかれば、それがCFの治療薬の開発につながる可能性があると指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)
参考リンク