球脊髄性筋萎縮症の重症度を正確に測る新たな評価指標を開発

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 既存のSBMA重症度の評価指標には、それぞれ課題があった
  2. 舌圧、握力などの定量的な測定結果を組み合わせて新たな評価指標SBMAFC を作成
  3. SBMAFC は既存の評価指標に比べて、感度が良く、治療開発などに応用できる可能性

治療開発に有用なSBMA重症度の評価指標は確立されていない

名古屋大学は、神経難病の球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の重症度を正確に測る新たな評価指標を開発したと発表しました。

SBMAは成人に発症する遺伝性の神経難病。SBMA患者さんの主な症状は手足や顔の筋萎縮や筋力低下で、30~60歳頃に発症します。SBMAの病態の解明に伴い、SBMA患者さんに対する治療法の開発研究も活発に行われるようになっています。

既存の評価指標にはそれぞれに長所・短所があった

既存の「ものさし」は、評価者がSBMA患者さんのさまざまな症状、例えば「歩き」「しゃべり」などの状態を、それぞれ1点、2点と点数付けし、それらを合計するタイプのものか、例えば6分間で歩くことができる距離を測定し、それをその患者さんの重症度を表す数値として使うか、のいずれかであることがほとんどでした。

前者には、歩きやしゃべりを含めて、SBMA患者さんのいろいろな運動機能を総合的に評価できるという長所がある一方、点数付けが粗いため感度が低い指標になりがちだという短所がありました。後者は定量的な測定結果を用いることで感度が高い評価ができるという長所はあると考えられるものの、さまざまある運動機能の障害が、歩行能力のみで評価されてしまうという短所がありました。

舌圧や握力、努力肺活量などの数値を組み合わせて評価する「SBMAFC」

そこで研究グループは、この2つのタイプの指標の長所を生かし、定量的な測定結果を組み合わせた複合的評価指標としてSBMAFC(SBMA functional composite)を作成しました。それぞれの症状の測定としては、舌圧、握力、ピークフロー、4.6m歩行時間、努力肺活量を用いることがよいことがわかりました。

作成した評価指標SBMAFCが有用かを、実際のSBMA患者さんと健康な人を対象に評価したところ、患者さんの運動機能を正確に反映し、すでに存在する評価指標に比べて、感度が良い検査手法であり、治療開発を含め広く応用できる可能性があることが示唆されました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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