TTR-FAPの新たな治療薬「ブトリシラン」が国内で製造販売承認を取得

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. TTR-FAPの進行を防ぐ治療法の1つに、siRNA製剤がある
  2. 2019年発売のsiRNA製剤「パチシラン」は、副作用などまだ改善点があった
  3. 今回承認された「ブトリシラン」は効果同等で副作用や投与方法の負担が改善されている

アミロイドを形成する異常なタンパク質が作られないように設計された薬

Alnylam Japan株式会社(アルナイラム)は11月2日、「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)~siRNAが拓く新たな治療ステージ~」と題したメディアセミナーを実施。同セミナーで、TTR-FAPの診療に携わっておられる、信州大学医学部 内科学第三教室(脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)教授(兼、信州大学医学部附属病院 副病院長)の関島良樹先生により、TTR-FAP治療の現状に関する講演が行われました。

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信州大学医学部 内科学第三教室(脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)教授 関島良樹先生

TTR-FAPは、体内の臓器や組織に「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質凝集体が沈着することで発症する遺伝性疾患です。この病気が発見されたのは1952年なので、2022年でちょうど70年なのだそうです。原因遺伝子としてTTR遺伝子が特定されており、日本では特に長野県と熊本県に患者さんが多いことが知られています。治療を受けなければ、発症から10~15年で命を落とす疾患ですが、進行を防ぐ、または遅らせるために有効な治療法がいくつかあります。

そのうちの1つが、核酸医薬品(siRNA製剤)による治療です。これは、変異した遺伝子から、アミロイドを形成する異常なタンパク質が作られないように設計された薬で、日本で初めて承認されたのは2019年という、新しい治療法です。

2019年に承認されたのは、「パチシラン」(製品名:オンパットロ)という薬でしたが、3週間に1回、3時間かかる点滴を受けに通院しなければならないことや、「脂質ナノ粒子」という成分を含むことで副作用が起こる場合があるなど、克服すべき課題もありました。

ドラッグデリバリーの仕組みを改善したことで患者負担も改善

そんな中、2022年9月に、新たなsiRNA製剤の「ブトリシラン」(製品名:アムヴトラ)が、日本で製造販売承認されました。ブトリシランは、同じくsiRNAを用いた、基本的に同じ作用機序の薬ですが、パチシランは「脂質ナノ粒子」によって肝臓に薬を到達させるのに対し、ブトリシランは「GalNAc」という構造を持つことで、肝臓に到達させます。つまり、ドラッグデリバリーの仕組みが違うわけで、問題になっていた脂質ナノ粒子による副作用が起こらず、副作用が大幅に低下したという大きな改善点があります。さらに、薬剤の安定性も増したことで、投与方法が3か月に1回の、数分で済む皮下注射で良くなりました。この点も、患者さんの負担を大いに減らすことにつながります。パチシラン、ブトリシラン、両方の臨床試験に携わっておられた関島先生は、こうした患者さんの負担に関する改善のほか、両者の有効性には差がないことを、論文データを用いて順番に示しました。

関島先生は質疑応答の際に、「いずれ診療ガイドラインの整備などが行われることになると思いますが、ブトリシランはファーストラインの薬になると思っています」との考えを述べられました。(遺伝性疾患プラス編集部)

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