ダウン症候群を伴う胎盤で、未熟な胎盤の原因となりうる遺伝子の発現異常を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ダウン症候群を伴う胎盤で発現している遺伝子を調べたところ、発現の異常を確認した
  2. 細胞融合を抑えるサプレシン遺伝子が過剰発現しており、未熟な細胞が増えていた
  3. 妊婦さんの血液でサプレシンが確認され、ダウン症候群の早期の予知に応用できる可能性

胎盤の形成と深く関連する細胞融合

広島大学を中心とした研究グループは、ダウン症候群(ダウン症)を伴う胎盤において、細胞の融合を抑える機能に関連している「サプレシン(SUPYN)遺伝子」が過剰に発現していることを発見するとともに、この遺伝子が設計図となるサプレシンタンパク質を妊婦さんの血液から検出する方法を開発したことを報告しました。SUPYN遺伝子の過剰発現は、ダウン症候群で見られる未熟な胎盤形成の原因の一つである可能性があり、またSUPYNタンパク質を検査することで、ダウン症候群を予測する予知マーカーとして応用できる可能性があります。

ヒトの胎盤では、2種類の細胞が融合することで機能的な胎盤が形成されます。最近の研究から、この細胞融合は、過去にヒト内在性レトロウイルス(HERV)というウイルスからヒトに移行した遺伝子やタンパク質が深く関わっていることがわかってきました。これまでに研究グループはHERV由来の遺伝子の一つであるSUPYNを世界で初めて発見しています。グループによると、SUPYNタンパク質は胎盤を作るために重要なタンパク質であり、逆にこれに異常がある場合には病気につながる可能性も予想されています。

一方で、ダウン症候群では、胎盤が正常に形成されないことが知られており、これには細胞融合の異常が関連している可能性が考えられていました。ダウン症候群は21番染色体が3本になるトリソミー(トリソミー21)が特徴ですが、染色体の増加が細胞融合の異常につながるはっきりとした原因についてはよくわかっていませんでした。研究グループは、SUPYNの存在している位置が21番染色体にあるところに着目し、SUPYNと胎盤の形成との関係を調べました。

ダウン症候群の早期予知につながる可能性

こうして確認されたのは、トリソミー21を伴う胎盤の細胞ではSUPYNが過剰発現していることでした。具体的には、ダウン症候群を伴う胎盤では、正常よりもSUPYNが2.2倍に上昇していました。この結果として細胞の融合が正常に進まずに、未融合の細胞が多くなることもわかりました。研究グループでは、SUPYNの過剰発現により、ダウン症候群において未熟な胎盤が形成される可能性があると指摘しています。

また妊婦さんの血液からSUPYNが検出されることも分かりました。研究グループは、SUPYNの検査を従来の検査と組み合わせることで、ダウン症候群のより早期で、より正確な予知が可能になると指摘しています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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