多数の遺伝性網膜疾患全体での、日本人患者さんに特徴的な傾向は?
東京医療センターを中心に、Japan Eye Genetics Consortium(JEGC)に参加する国内の大学病院や眼科施設の共同研究グループは、遺伝性網膜疾患の患者さん1,210の家系を対象に全エクソン配列解析を行い、日本人患者さんで多く見られる疾患原因遺伝子と変異を明らかにしました。
遺伝性網膜疾患は遺伝子の異常が原因で網膜組織の変性や視細胞の機能低下をきたす病気の総称で、網膜色素変性や黄斑ジストロフィーを含みます。これまでに250以上の原因遺伝子が報告されており、そのいくつかに対しては遺伝子治療が試験的に行われています。
一方、原因遺伝子の解明と大規模な遺伝学的研究は欧米を中心に進められてきたことから、これらの研究で多くの患者さんに見られるとされていた原因遺伝子と、日本人の患者さんで多く見られる原因遺伝子には違いがありました。
JEGCは、日本人における遺伝性網脈絡膜疾患の病因遺伝子を明らかにするために立ち上がった研究で、これまでにオカルト黄斑ジストロフィーや網膜色素変性など個別の疾患について遺伝子解析の結果を発表してきました。ですが、遺伝性網膜疾患として統合した場合にも日本人に特徴的な傾向が見られるのかは検討されていませんでした。
448家系の原因遺伝子と変異を特定
研究グループは、JEGCの22施設で収集した28の遺伝性網膜疾患からなる1,210家系を対象に、全エクソン配列解析を用いて原因遺伝子と変異の同定を行い、これまでの発表も含めて448家系(37%)について原因遺伝子と変異を特定しました。
「EYS」「RP1」の遺伝子に日本人に特徴的な変異を発見
研究全体では、網膜色素変性の原因遺伝子として知られる「EYS」が最も多く(82家系)検出されました。EYSを原因遺伝子とする患者さんのなかでは、日本人創始者変異として知られる2つの変異(p.S1653Kfs*2、p.Y2935X)と高頻度変異(p.G843E)のどれかを持つ人が88%を占めていました。
2番目に多かったのは「RP1」(30家系)でした。RP1を原因遺伝子とする患者さんの中では黄斑ジストロフィーと診断されたケース(14家系)が最も多く、その86%は日本人の高頻度変異(p.R1933X)とRP1のエクソン4内のAlu配列挿入を複合ヘテロ形式で持っていました。
日本人を含む東アジア人は、上記の変異を、その他の地域の人々に比べて高い頻度で持っていることから、遺伝的背景が疾患原因遺伝子の頻度の違いに影響していることが示唆されました。(遺伝性疾患プラス編集部)