家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体、広範な動脈硬化性疾患を併発しやすい人の特徴を明らかに

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体は、冠動脈、脳血管、頸動脈、下肢血管など複数の血管に幅広く動脈硬化性の病気を引き起こすことがある
  2. FH患者さん370人のデータから、複数の動脈硬化性の病気を抱えやすい人の特徴を解析
  3. Lp(a)値、年齢、家族歴が危険因子になることがわかった

動脈硬化を原因とする病気を引き起こしやすい病気

国立循環器病研究センターの研究グループは、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(以下、FH)において、どのような人が動脈硬化を原因とする血管病を複数抱えるのか特徴を報告しました。

FHは生まれつき血中のLDLコレステロール値がとても高いことを特徴とする遺伝性疾患です。FHにおいて、男性は55歳未満、女性は65歳未満の比較的低い年代のうちに動脈硬化を原因とする心臓や血管の病気を引き起こしやすいことがわかっています。研究グループは2021年、FHは冠動脈疾患のほかにも、脳血管、頸動脈、下肢血管など複数の血管に幅広い動脈硬化性疾患「Polyvascular Disease(PolyVD)」を引き起こすことを報告しました。

また、研究グループはPolyVDを発症しているFH患者さんが、動脈硬化のリスクとして知られる血液中のリポタンパク(a)[Lp(a)]値が高値であることを発見していました。今回、Lp(a)値は、FHの人においてPolyVDを引き起こしやすいかどうかの指標になりうるのではないかと考え、研究を行いました。

研究では、同センターに受診または入院し、全身の動脈について検査されたFH患者さん370人を対象に、これまでのデータを解析し、PolyVDのリスクとなりうる因子について検討しました。PolyVDは、冠動脈疾患、頸動脈狭窄症、下肢動脈疾患のいずれか2つ以上を抱える場合としました。

年齢、家族歴、Lp(a)が危険因子

その結果、FHの21.9%は動脈硬化性の病気を何か1つは抱えており、5.7%がPolyVDに該当すると確認されました。PolyVDを発症している人では、アキレス腱肥厚、皮膚黄色腫、角膜輪が多く確認された他、高Lp(a)血症も高頻度で確認されました。

解析の結果、Lp(a)値、年齢、家族歴が、FHにおいてPolyVDの起こりやすさを予測する因子となりうることがわかりました。「Lp(a)が50mg/dL以上」「年齢58歳以上」「早発性の冠動脈疾患家族歴」のすべての条件を満たす場合には、PolyVDを併発するリスクが33.3%と高い割合となりました。研究グループによれば、Lp(a)に対する治療薬が開発されており、今後、臨床研究の結果が明らかになる予定です。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)

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