痛みや温度を感じにくい、遺伝性感覚自律ニューロパチーⅡ型
東京医科歯科大学の研究グループは、遺伝性感覚自律ニューロパチーⅡ型の原因と考えられているWNK1/HSN2遺伝子の変異が、この病気の発症にどのように関わっているかを明らかにしたと発表しました。
遺伝性感覚自律ニューロパチーⅡ型は、痛みや温度を始めとする感覚の低下、手足の関節の変形などの症状を特徴とする遺伝性の神経疾患です。痛みや触覚を感じにくいことから、けがなどをしていても気が付かず治療が遅れることなどで、潰瘍となる危険性もあります。
この、遺伝性感覚自律ニューロパチーⅡ型を引き起こす原因遺伝子として、WNK1/HSN2の変異が知られています。WNK1/HSN2遺伝子は、神経だけで働くWNK1遺伝子で、これまでに、この病気で多くのWNK1/HSN2変異体が報告されてきましたが、この病気の発症にどのように関わっているのかについてはほとんどわかっていませんでした。研究グループは、患者さんで報告されているWNK1/HSN2変異体を、マウスの神経細胞に導入し、これらの遺伝子から作られるタンパク質の機能解析を行いました。
正常なタンパク質を阻害して、神経細胞の突起の伸長や神経への分化を抑制
その結果、実際の患者さんと同じWNK1/HSN2変異体を持つ細胞では、神経細胞の突起の伸長抑制や神経分化が抑制されており、変異体から作られた異常なタンパク質が、正常なWNK1/HSN2の機能を阻害することがわかりました。
研究グループは以前の研究でWNK1タンパク質がGSK3βと呼ばれるタンパク質と一緒に神経への分化を促進する役割を持っていることを明らかにしていました。今回、WNK1/HSN2変異体が作る異常なタンパク質は、GSK3βタンパク質と結合することでその機能を阻害することがわかりました。
今回の研究から、遺伝性感覚自律ニューロパチーⅡ型における、WNK1/HSN2変異体が、ドミナントネガティブな変異体として正常な遺伝子から作られたタンパク質を抑制することが見出され、これまで知られていなかった発症機構の解明につながることが期待されます。(遺伝性疾患プラス編集部)