国内で数万人以上が存在すると推定される
国立循環器病研究センターは、遺伝性脳卒中や若年性認知症の原因となるCADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)の患者さんを専門的に診察する専門外来を開設したことを発表しました。
CADASILは遺伝性脳小血管病と呼ばれる脳の細かい血管に異常を引き起こす病気の一種で、国の指定難病の対象疾病です(厚生労働省指定難病124)。日本では1,200人ほどが存在すると推定されてきましたが、多数の人々の遺伝情報を網羅的に調べるゲノム研究の進展から、国内には数万人以上が存在する可能性もあると考えられています。
CADASILは、NOTCH3という遺伝子の病的バリアントが原因になります。CADASILは常染色体優性(顕性)遺伝形式で遺伝し、一対ある遺伝子の片方に病的バリアントが存在するだけで、病気につながる可能性があります。
CADASILの症状としては20~30代に片頭痛、30~40代に脳卒中、40~50代に認知症を発症し、脳梗塞を繰り返すことで寝たきりになって65~70歳前後で死亡すると考えられてきました。しかし、NOTCH3の病的バリアントが世界で300種類以上報告される中で、その患者さんがどの種類の病的バリアントを持つかによって症状も異なることがわかってきました。
国立循環器病研究センターでは、2022年10月時点で約100人のCADASIL患者さんの通院を受け入れ、世界でも有数の診療実績を持つまでになりました。そこで、同センターでは、過去の診療経験を生かした診療を提供し、患者さんにとっても受診しやすくするため専門外来を開設することを決めました。
22年11月から毎週水曜日に開設
専門外来は22年11月2日から毎週水曜日午後に開設しています。CADASILの診療経験が多い医師が担当し、他院で診断された場合、病気が疑われる人の新規の受診を若い人も含めて受け入れます。受診には紹介状が必要で、同センターの専門医療連携室からの予約を通じて受診可能で、原則的に保険診療になります。
専門外来では、通常の治療の提供だけではなく、研究段階の治療に参加する治験や臨床研究への紹介もしていきます。同センターでは現在、世界初の医師主導治験を進めています。また、患者会や遺伝カウンセリングの紹介も可能だとしています。(遺伝性疾患プラス編集部、協力:ステラ・メディックス)