拡大新生児スクリーニングの検査体制が群馬県で確立、4月から検査開始

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 群馬県の分娩取扱施設で、4月から拡大新生児スクリーニング(有料検査)が開始
  2. 対象疾患はライソゾーム病6疾患、SCID、SMA、副腎白質ジストロフィーの9疾患
  3. 対象疾患が最多で早期発見・早期治療の実績もあるCReARIDを利用

新生児マススクリーニングの20疾患以外にも早期発見・早期治療が重要な疾患がある

埼玉医科大学は、群馬大学、群馬県、千葉県こども病院などと共同で、群馬県における「拡大新生児スクリーニング」の検査体制を確立したと発表しました。

小児の疾患の中には、生まれてすぐには気づかれず、成長するにつれて重い障害が明らかになるものがあります。こうした疾患の中には、生まれてすぐ(新生児期)に発見して治療を開始することにより、発症を予防できる疾患が含まれます。日本では、このように早期発見・早期治療が可能な20の疾患を対象に新生児マススクリーニング検査が行われています。

しかし、この20疾患のほかにも、早期診断・早期治療が望ましい疾患はあります。「拡大新生児スクリーニング」とは、この20疾患以外で、早期診断・早期治療により患者さんの症状などを明らかに改善できる疾患を対象に、有料検査として行うものをいいます。今回の群馬県での体制整備は、拡大新生児スクリーニングを持続的に実施する目的で行われました。

CReARID、赤ちゃん6万6,571人を検査し12人で病気発見の実績

同大の大竹特任教授、奧山特任教授が千葉県こども病院の村山圭部長と共に立ち上げた一般社団法人希少疾患の医療と研究を推進する会(CReARID、クレアリッド)では、2018年2月より拡大新生児スクリーニングを行ってきました。対象疾患は、ライソゾーム病6疾患(ファブリー病、ポンぺ病、ムコ多糖症Ⅰ・Ⅱ・ⅣA・Ⅵ型)、重症複合免疫不全症(SCID)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、副腎白質ジストロフィーの9疾患です。

開始以来5年間の結果として、埼玉県、千葉県を中心とする58病院で生まれた赤ちゃん合計6万6,571人を対象に検査が行われ、うち12人で病気が発見され、その早期治療に貢献することとなりました。

持続的な実施のため体制を整備し開始、今後拡大を目指す

今回、群馬県で、より多くの疾患を対象とした拡大新生児スクリーニングを持続的に実施するために、群馬大学大学院医学系研究科小児科学講座の大津義晃助教が主導し、群馬県先天性代謝異常等検査検討会議、群馬県産婦人科医会、小児科医会の協力のもと、令和5年1月6日、群馬県生活こども部児童福祉・青少年課長から県内分娩取扱施設宛に、「先天性代謝異常等検査における拡大スクリーニング実施機関の周知」を促す通達がありました。

通達には、拡大新生児スクリーニング検査機関の資料が添付されましたが、対象疾患が9疾患と最も多いCReARIDを選択する分娩取扱施設が最多でした。こうした経緯により、群馬県の多くの分娩取扱施設で、4月からCReARIDを利用した9疾患対象の拡大新生児スクリーニングを開始できる体制となりました。

共同発表グループは、「救うことのできる患者さんの数を一刻も早く増やすためにも、そして受けることのできる方とできない方の差別をなくすためにも、今後一層の拡大新生児スクリーニングの広がりが期待されます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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