フェニルケトン尿症、新規治療薬「パリンジック皮下注」が国内で承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 成人のフェニルケトン尿症に対する治療薬「パリンジック皮下注」が国内で製造販売承認を取得
  2. フェニルアラニンを分解することで血中のフェニルアラニン濃度を抑える
  3. 海外と国内の3つの臨床試験結果に基づいた承認

酵素の欠損で分解できなかったフェニルアラニンを分解する注射薬

BioMarin Pharmaceutical Japan株式会社は3月27日、成人のフェニルケトン尿症の治療薬として「パリンジック(R)皮下注2.5mg」「パリンジック(R)皮下注10mg」「パリンジック(R)皮下注20mg」(一般名:ペグバリアーゼ、以下パリンジック皮下注)が国内製造販売承認を取得したことを報告しました。

フェニルケトン尿症は、体内でフェニルアラニンと呼ばれるアミノ酸をチロシンに変換するのに必要なフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の設計図となるPAH遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性疾患です。血液中のフェニルアラニン量が増加し過ぎることで脳や神経のほか、体にさまざまな症状が現れます。発症率は約7万人出生あたり1人とされ、国内の患者数は約500人と推定される希少疾患です。

パリンジック皮下注は、同社が開発したPAH酵素の役割を補う治療薬で、フェニルアラニンをアンモニアとケイ皮酸と呼ばれる物質に分解することで血中のフェニルアラニン濃度を抑える働きがあります。この薬はフェニルケトン尿症の治療薬として、米国では2018年5月、欧州連合では2019年5月から患者さんに提供可能となっていました。

血中フェニルアラニン濃度の変化量、プラセボと比較し統計学的に有意な差

今回の国内製造販売承認は、海外での第3相臨床試験である「PRISM-1:165-301試験」、「PRISM-2:165-302試験」、国内第3相臨床試験である「165-305試験」の結果に基づいて行われました。

PRISM-1:165-301試験では、パリンジック皮下注投与歴のない患者さんを対象に、パリンジック皮下注20mgまたは40mgが投与され、投与24週時における血中フェニルアラニン濃度の平均値は、ベースラインからの変化量がそれぞれ-334.7、-509.3μmol/Lでした。

PRISM-2:165-302試験は、先行して実施された臨床試験を完了した患者さんを対象に行われました。パリンジック皮下注のグループにおいて、ベースラインからの血中フェニルアラニン濃度の変化量は、プラセボ(偽薬)のグループと比較し、統計学的に有意な差が認められました。

重大な副作用として、アナフィラキシー、血清病が報告されています。

同社は、「日本において、約30年ぶりとなるフェニルケトン尿症に対する新規治療薬を提供できることをうれしく思う」と伝えています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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