希少疾患の遺伝的原因は半数以上が不明
東京大学医科学研究所を中心とした研究グループは、統計学的方法と計算論的アプローチの解析から疾患関連の検証を行い、原発性リンパ浮腫、胸部大動脈疾患、先天性聴覚障害の希少3疾患の遺伝的病因を明らかにしたと発表しました。
希少疾患の多くは遺伝性であるとされていますが、その半数以上がいまだに原因不明です。このような未知の遺伝的病因を明らかにする手法の一つとして、大規模な患者集団のゲノム解析が有用であると考えられ、より効率的で強力な分析手法が求められています。
研究グループは、患者さんの症状や特徴といった表現型のデータと膨大な遺伝的情報のデータから、希少疾患の病因を解明する手法を確立するための研究を行いました。
3つの疾患の原因遺伝子を明らかに
研究グループは、7万7,539人の患者さんの全ゲノム配列解析結果から、まれなバリアントの遺伝子型と表現型を含むデータベース「Rareservoir」を構築しました。遺伝的関連を推定する手法を用いて、遺伝子と269のまれな疾患分類との関連を推定し、これまで知られていなかった19の関連を見出しました。
続けて、別の患者さんたちを対象としてさらに解析を行い、ERG、PMEPA1、GPR156の3つの遺伝子が、それぞれ順に、原発性リンパ浮腫、ロイス・ディーツ症候群、劣性(潜性)の先天性聴覚障害の3つの疾患の原因遺伝子であることを明らかにしました。以上から、開発されたデータベースが、まれな疾患患者さんの研究に必要な遺伝的データと、表現型データを統合する有用なシステムであることがわかりました。
研究グループは、研究の成果が3つの疾患だけでなく他の希少疾患の治療法開発への道筋となると伝えています。(遺伝性疾患プラス編集部)