COVID-19に関連した子どもの突然死、その背景に「ヌーナン症候群」を発見

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. LZTR1遺伝子の変異が原因となるヌーナン症候群については不明点が多かった
  2. 新型コロナウイルス感染症に関連し亡くなった患者さんの原因について、分子剖検と呼ばれる方法で調査
  3. まれな心疾患/白血病を伴うLZTR1遺伝子変異のヌーナン症候群が見つかり、複数の病気が複雑に関連した突然死だったと判明

特徴的な顔立ち、先天性の心疾患などさまざまな症状を示すヌーナン症候群

東京医科歯科大学を中心とする研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した子どもの突然死の原因を調べ、その一例として背景にLZTR1遺伝子変異を持つヌーナン症候群を発見したと報告しました。

ヌーナン症候群は、細胞の増殖・分化・細胞死などに関わるRas/MAPKシグナル伝達経路に関連した遺伝子の変異が原因となって、特徴的な顔立ち、先天性の心疾患、がんなどのさまざまな症状を示す遺伝性疾患です。患者さんによって幅広い症状が見られることから、不明なところも多く、まだこの病気であることに気付かれていない患者さんもいると考えられています。

これまでに、ヌーナン症候群の原因となる遺伝子は複数知られていましたが、最近、新たにLZTR1と呼ばれる遺伝子の変異が関連することが明らかになりました。しかしこのLZTR1遺伝子変異のあるヌーナン症候群の患者さんの数は少なく、病態との関連性など不明点が多くありました。

新型コロナウイルス感染症に関連し亡くなった小児患者さんの原因究明

研究グループは、SARS-CoV-2のPCR陽性で亡くなり、これまで基礎疾患が指摘されていなかった子どもの患者さんの分子剖検(分子生物学的手法で遺体を検査し原因を調べる)を行いました。その結果、まれな冠動脈起始異常とよばれる心血管系の異常と小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病と呼ばれる疾患を持っていたことが明らかになりました。また、全エクソーム解析による遺伝学的検査においてLZTR1遺伝子の変異が明らかになるとともに、専門医によってヌーナン症候群に特徴的な顔立ちを持つことが指摘されました。

これらのことから、LZTR1遺伝子変異のあるヌーナン症候群における今回の突然死は、新型コロナウイルス感染症、心血管系の異常、白血病といった複数の病態が複雑に関連していたことが明らかになりました。この遺伝子変異を持つヌーナン症候群の病態を知る上で重要な手がかりとなることが期待されます。

研究グループは、全エクソーム解析を用いる分子剖検は、突然死の診断や予防などにも応用が期待できると述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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