デュシェンヌ型筋ジストロフィー初の遺伝子治療薬「ELEVIDYS」が米国で迅速承認

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. DMDの初の遺伝子治療薬「ELEVIDYS」が米国FDAで迅速承認
  2. AAVベクター遺伝子治療薬で、1回の点滴によりマイクロジストロフィンを筋肉で発現させる
  3. 今回の迅速承認はマイクロジストロフィン発現増加に基づいており、今後確認試験が行われる

ジストロフィンの機能を「マイクロジストロフィン」で補う

米国のサレプタ・セラピューティクス(Sarepta Therapeutics)は2023年6月22日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)における初の遺伝子治療薬「ELEVIDYS」がFDAにより迅速承認されたことを発表しました。治療の対象となるのは、DMD遺伝子の変異が確認された4~5歳のDMD小児患者さんです。

DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異が原因となり正常なジストロフィンタンパク質が作られず、進行性に筋肉が変性していく遺伝性疾患です。

ELEVIDYS(一般名:delandistrogene moxeparvovec-rokl)は、AAV(アデノ随伴ウイルス)ベースの遺伝子治療薬で、治療は1回の点滴投与で行われます。この薬が点滴で体内に入ると、筋肉内に「マイクロジストロフィン」と呼ばれる短縮型のジストロフィンをコードする遺伝子が導入され、発現したマイクロジストロフィンの機能により、ジストロフィンの欠乏に対処できるようになります。

ELEVIDYSは現在、3つの臨床試験、SRP-9001-101、SRP-9001-102、SRP-9001-103で評価が進められており、今回、主にSRP-9001-102とSRP-9001-103における、骨格筋でのマイクロジストロフィンの発現増加を示すデータに基づき迅速承認されました。これら3つの試験により80人以上の患者さんが治療を受け、ELEVIDYSの安全性が確認されています。また、SRP-9001-102とSRP-9001-103ではELEVIDYSの有効性が示されています。

エクソン8/9欠失の患者さんには禁忌

安全性に関する情報として、臨床試験で最も多くみられた副作用は、嘔吐、吐き気、肝機能検査値上昇、発熱、血小板減少でした。ELEVIDYS投与後8週間以内に、急性の重篤な肝損傷が起こる場合があります。また、DMD遺伝子のエクソン 8および/またはエクソン9に欠失変異がある患者さんにおいて、ELEVIDYS投与後約1か月で免疫介在性筋炎が観察されたことから、ELEVIDYSはこれらの患者さんに対しては禁忌とされています。このほか、ELEVIDYS投与後に、急性の重篤な心筋炎が起こる場合があります。

今後、ELEVIDYSの市販後確認試験として、4~7歳のDMD患者さん126人を対象とした国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験であるSRP-9001-301試験(別名:EMBARK試験)が実施され、2023年後半には継続承認に関わるトップライン結果が得られる予定です。

米国ネイションワイド小児病院(Nationwide Children's Hospital)の小児神経科医で遺伝子治療センターの治験責任医師であるJerry Mendell博士は、「DMDは子どもたちから容赦なく筋機能を奪っていきます。ELEVIDYSにより治療効果が得られれば、患者さんの生活に変化をもたらすことができます」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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