1・2型SMA発症前、生後6週前にスピンラザ治療開始の25人対象
バイオジェン・ジャパン株式会社は、スピンラザ(一般名:ヌシネルセン)について、脊髄性筋萎縮症(SMA)の臨床症状を発現する前に治療を開始した小児患者さんに関するNURTURE試験データを発表しました。
SMAは、SMN1遺伝子の変異によって、正常なSMNタンパク質がつくられなくなる、進行性の遺伝性疾患です。SMNタンパク質は、運動ニューロンの生存維持に重要な役割を担っています。そのため、SMAの患者さんでは、体幹や手足の筋力低下や筋委縮といった症状が見られます。
スピンラザは、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」と呼ばれる種類の核酸医薬。SMAの患者さんの体内で不足している、機能的なSMNタンパク質の量を増やすようにデザインされた薬です。
NURTURE試験は、継続中の第2相オープンラベル臨床試験。SMAの遺伝子診断を受け、1型または2型SMAを発症する可能性が極めて高いと考えられ、生後6週前に最初のスピンラザ治療を受けた未発症の患者さん25人を対象としています。同試験は、スピンラザの早期治療の影響をより理解することを目的とし、8歳までのより長期的な治療の有効性と安全性を評価しています。
未発症の患者さん25人中23人、年齢相応の時期に自力歩行
今回は、NURTURE試験の5年間の結果が発表されました。未発症の患者さんが、5年間にわたり運動機能を維持し続けていることを示したそうです。
SMN2遺伝子のコピー数が3の未発症の患者さん10人は、1人の例外※を除いて、世界保健機関(WHO)の運動発達に関する全てのマイルストーンを年齢相応の時期に達成しました。SMN2遺伝子のコピー数が2の未発症の患者さん15人は、全員が補助無しで座り、補助があれば立ち上がることができました。15人のうち14人は、補助があれば歩行できるようになり、13人は1人で立ち上がり、1人で歩けるようになったそうです。何人かは、年齢相応の時期にこれらのマイルストーンを達成しました。
(※)補助があれば歩行できるようになる時期を逸した症例。その後、期待された時期に自力歩行を達成しました。
前回、NURTURE試験の結果が論文報告されて以降、SMN2遺伝子のコピー数が2の未発症の患者さん2人が、フィラデルフィア子ども病院乳幼児神経筋疾患テスト(CHOP INTEND)において、最高スコアを3.8歳から4.8歳の間に達成しました。同試験でこれを達成した未発症の患者さんの総数は、この2人が追加され22人となりました(12人[80%]はSMN2遺伝子コピー数2、10人[100%]はSMN2遺伝子コピー数3)。主要評価項目で定義された呼吸介入を必要とする症例については、前回のデータカット時には4人が報告されていましたが、今回新たに該当する症例は認められませんでした。
なお、2年間のフォローアップ期間延長後も、全ての参加者は生存しており、永続的な人工呼吸器の使用を必要とする参加者はいません。25人中23人の未発症の患者さんが、年齢相応の時期に自力歩行しています。
24か月以内に呼吸器装着など必要・SMA発症の患者さんは皆無または少数
NURTURE試験データの事後解析では、神経損傷の指標が臨床症状の発現前から疾患進行を示すという仮説の下に、ベースラインの疾患活動性(例:複合筋活動電位[CMAP]や反射消失)の早期マーカーを評価。NURTURE試験では、CMAP値の低い(≥1 mV)または反射消失のある患者さんの組み入れも認め、他の未発症の患者さんを対象とする臨床試験とは異なるベースラインの特徴を持つ参加者を組み入れました。
腓骨CMAPが2mV以上または反射消失を有するという基準を満たさない、SMN2遺伝子コピー数が2の参加者のデータを除外すると、NURTURE試験サブグループの全体的な運動機能、非運動機能のアウトカムは、試験コホート全体のデータより良いものだったそうです。具体的には、正常な発育状況に相応の時期に運動機能のマイルストーンを達成した参加者の割合がより高く、24か月以内に呼吸器の装着や胃瘻チューブの造設が必要だった未発症の患者さんやSMAを発症した患者さんは皆無または少数でした。
フォローアップ期間延長中のスピンラザの安全性プロファイルは、以前報告された結果と一貫していました。同試験では、12人(48%)の参加者が1つ以上の重篤な有害事象を経験。重篤な有害事象も含めて、スピンラザ治療との関連はないと考えられたそうです。NURTURE試験で最も多く報告された有害事象は、発熱、上気道感染症、咳、鼻咽頭炎でした。約1年ごとに解析すると、重症な有害事象の発症率は時間の経過に伴い減少したとしています。(遺伝性疾患プラス編集部)