「生殖補助医療」や「母親の高齢化」、インプリンティング疾患の発症への影響が判明

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. インプリンティング疾患と生殖補助医療/母親の年齢との関係を発症原因別に評価した
  2. その結果、生殖補助医療はエピ変異による同疾患のリスクとなるが、片親性ダイソミーによる同疾患への影響は少ないと示唆された
  3. 母親の年齢との関連では、片親性ダイソミーでは母親の高齢化がリスクとなるのに対し、エピ変異では関連が見られなかった

生殖補助医療や母親の年齢、インプリンティング疾患とどのように関連するのか

国立成育医療研究センターの研究グループは、生殖補助医療や母親の年齢とインプリンティング疾患の関係を評価したと発表しました。

インプリンティング疾患とは、DNAのメチル化の異常などの「エピ変異」や「片親性ダイソミー」などにより、インプリンティング遺伝子と呼ばれる遺伝子のオン、オフを調節する制御が失われることによって起こるような希少疾患で、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群など8つの疾患があります。

生殖補助医療は人工的な環境下で、卵子や精子、受精卵を操作することから、上記のような遺伝子のオン、オフを制御するメチル化のような化学変化の異常を引き起こし、インプリンティング疾患の発症リスクを高めると考えられてきました。しかし、これまでのインプリンティング疾患と生殖医療の関係を評価した研究では、メチル化の異常や片親性ダイソミーのどちらが原因で発症したのかなどが考慮に入っていませんでした。また、母親の年齢とインプリンティング疾患の原因との関連も明らかにされていませんでした。

研究グループは、日本産科婦人科学会のデータベースを用い、一般集団とインプリンティング疾患における生殖補助医療の頻度もしくは母親の年齢との関係を、疾患の起こるメカニズムを考慮に入れて比較しました。

インプリンティング疾患の要因ごとに解析

今回の研究では、体外受精、顕微授精、凍結胚移植を生殖補助医療と定義し、30歳以上の母親における生殖補助医療の頻度と、エピ変異もしくは片親性ダイソミーによるインプリンティング疾患それぞれにおける生殖補助医療の頻度を比較しました。

その結果、エピ変異原因のインプリンティング疾患における生殖補助医療の頻度は30歳以上の一般集団における生殖補助医療の頻度よりも高く、逆に片親性ダイソミーが原因のインプリンティング疾患では生殖補助医療の頻度が一般集団と同等であったことから、エピ変異によるインプリンティング疾患には生殖補助医療がリスク因子となる一方で、片親性ダイソミーによるインプリンティング疾患への影響は少ないと示唆されました。

また、母親の年齢とエピ変異もしくは片親性ダイソミーが原因のインプリンティング疾患の関連を調べたところ、片親性ダイソミーでは母親の高齢化がリスク因子となるのに対し、エピ変異では関連が見られないことが明らかになりました。

過度に心配する必要はない

研究グループは、この研究はインプリンティング疾患の発症に対する生殖補助医療および、母親の年齢の正確な影響を明らかにした世界最大規模の横断的研究であると伝えるとともに、インプリンティング疾患は希少疾患であり、新生児に対する発症頻度も低いため、研究成果により生殖補助医療を控えた方がいいなどの過度な心配は必要ないことに注意してほしいと述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク