神経線維腫症II型、日本人患者さんの遺伝子変異タイプと症状の経過との関連性を報告

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. 神経線維腫症II型の原因遺伝子の変異タイプと症状を比較した日本人の報告はほとんどなかった
  2. 日本人の患者さん14人の遺伝子を解析、発症年齢・腫瘍の増大・聴力症状の経過との関連を比較
  3. 発症年齢と遺伝子変異のタイプに関連あり、腫瘍の増大や聴力の悪化については関連なし

聴神経に腫瘍ができ、難聴となる病気

東京医療センターを中心とした研究グループは、神経線維腫症II型(NF2)の日本人患者さんについて、病気の原因となる遺伝子の変異を解析し、症状の経過との比較を行ったと発表しました。

NF2は、NF2遺伝子の変異により発症する遺伝性疾患で、音を脳に伝える聴神経の左右両方に腫瘍ができて両耳とも聞こえにくくなる、脳や脊髄の神経にも腫瘍が発生する、若い年齢で白内障を発症するなどの症状が見られます。NF2遺伝子は、Merlin(マーリン)という細胞内の情報の伝達に関わるタンパク質の設計図で、正常なMerlinは腫瘍の発生を抑制する働きがあるとされます。

遺伝子の変異のタイプは、結果的にタンパク質が作られなくなる変異と、通常とは異なったタンパク質が作られる変異に分けられ、両者を比べるとタンパク質が作られなくなる変異の方が、重症化しやすいと言われています。しかし、NF2は希少な疾患であることなどから、変異のタイプと病気の重症度に関する報告は欧米の患者さんのものが多く、日本やアジアからの報告はほとんどありませんでした。また、聴力の経過についての詳細な報告もされていませんでした。

研究グループは、日本人のNF2患者さん14人の血液からNF2遺伝子の解析を行い、発症年齢や腫瘍の大きさなどのほか、特に聴力症状の経過との関連について詳細に調べました。

タンパク質が作られない変異タイプと20歳未満での発症に関連

遺伝子の変異のタイプと発症年齢との関連を調べたところ、タンパク質が作られなくなる変異を持つ症例のグループでは、全員が20歳未満で発症していることが判明しました。

腫瘍の増大や聴力の悪化については、遺伝子の変異のタイプによる傾向は見つかりませんでした。また今回、1人の患者さんであっても、右と左の耳で腫瘍の増大や聴力の悪化が非対称である場合があることも判明し、それらの事から、腫瘍の大きさや聴力の変化については、遺伝子の変異のタイプ以外にも影響を与える要因があると示唆されました。

今後、それらの因子を明らかにすることによって、患者さんの聴力の予測や新たな治療のターゲットの模索につながると考えられます。

研究グループは、今回の報告がNF2の難聴の病態解明の一助になることが期待される、と述べています(遺伝性疾患プラス編集部)

関連リンク