デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ヒト羊膜由来幹細胞による第1/2相治験開始

遺伝性疾患プラス編集部

POINT

  1. ヒト羊膜由来間葉系幹細胞「KA-301」は、採取の侵襲性が低く大量生産可能で、治療応用が研究されている
  2. 東京大学医科学研究所との共同研究で、KA-301を用いた新たなDMD治療につきマウスで実証できた
  3. これを受け、今回第1/2相治験の開始に至った

DMDモデルマウスでの実証を経て治験開始

株式会社カネカは2023年7月28日、「ヒト(同種)羊膜由来間葉系幹細胞:KA-301(以下、KA-301)」によるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy、以下、DMD)の第1/2相治験を開始すると発表しました。

DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異により正常なジストロフィンが産生されないことで筋肉の壊死が起こる進行性の遺伝性神経筋疾患です。KA-301は、出産時の胎盤から分離した羊膜に存在する未分化の細胞で、筋肉、骨、軟骨、脂肪など間葉系に属するさまざまな細胞に分化する能力や自己複製の能力を持っています。加えて、高い免疫抑制作用があり、拒絶反応が起こりにくいため他人にも移植しやすいなどの特長があります。さらに、羊膜の採取にはドナーへの新たな侵襲を伴わず、1枚の羊膜からたくさんの間葉系幹細胞が得られるため、大量生産に適しています。

同社は出産時の羊膜から分離したKA-301を用いる新たな治療法を研究しており、東京大学医科学研究所遺伝子・細胞治療センターとの共同研究におけるKA-301のDMDモデルマウスでの実証を経て、今回の治験の開始に至りました。

今回の治験は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業(NexTEP)の採択を受けた「KA-301開発事業」の一環として、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターをはじめとする国内医療機関・研究機関と連携して実施されます。

同社は、「本治験を通して重篤かつ進行性の遺伝性神経筋疾患であるDMDの方々への治療に貢献してまいります」と、述べています。(遺伝性疾患プラス編集部)

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